英国発の伝道プログラム「アルファコース」が最近、米国の教会で再び注目を集めている。食事などを共にしながらキリスト教をわかりやすく教える同プログラムは、世界169カ国のカトリックも含めた様々な教派で用いられている。米国では97年に紹介され注目を集めた後減退傾向にあったが、ここ最近伝道用プログラムとしての理解が深まり、採用する教会が増加しているのだ。
「今、(アルファコースが)米国で爆発的に広がり始めている。人々が(アルファコースを)理解し始めている」と話すのは、米国でのアルファコース普及に当るアルファUSA事務局長のジェラード・ロング氏(52)。
同プログラムは米国に紹介された当時、「この時代の新しい教会プログラム」として非常に高い人気を集めた。しかし多くの場合、教会員向けの弟子訓練プログラムとして用いられてしまい、一度実施して終わってしまうというケースが多かった。このような用い方について、ロング氏は「アルファコースの本質を全く欠いてしまっている」と指摘。同プログラムがクリスチャンを対象とした弟子訓練用プログラムではなく、ノンクリスチャンを対象とした伝道用プログラムであることを強調する。
米国でアルファコースは注目を集めた後、急速に減退した。しかし、ここ2年ほどの間に伝道用プログラムとしての理解が広まり、ノンクリスチャン向けに同プログラムを用いる教会が増えている。
「ここ2年間で、我々の規模は2倍になった」「我々は教会に、どのようにして教会を運営すべきか本当に新しい視点で見てみるべきではないかと伝え続けている」とロング氏は言う。
7年前に米国に家族と共に移住してきたロング氏は、世界最大級の金融グループであるHSBCの幹部であった。06年に退職してアルファUSAの働きに加わったが、HSBCを退職することは自身にとって苦にならない選択だったと話す。
ロング氏は、今後米国でアルファコースが普及することに期待をしているが、その一方でアメリカのキリスト教会の現状について懸念を抱いていると言う。
「ロンドンに住んでいた時、私は本当に心を痛める悲劇を見てきた。教会が閉鎖され、寺院やモスク、映画館などに変わっていくのだ。本当に悲劇だ。今では、ヨーロッパの50パーセントの人々が無神論者だ。これらのことを目撃することは本当に恐ろしいことだ」と話す。
「アメリカに来て同じような兆候を見る。先週、今年の教会の抵当権請戻しの権利喪失件数が、アメリカのキリスト教史上最も多かったと聞いた」「アメリカの教会は本当に転換点を迎えている。ヨーロッパと同じ道を歩むか、それを止める小さな窓を見つけるか」
ロング氏は、アメリカのキリスト教会がヨーロッパのキリスト教会が歩んだ減衰の道とは逆の道を歩むことができると強調する。しかし、ロング氏はそのためには教会がイエス・キリストの伝道方式である「出て行く(Go)」という方式に立ち返らなければいけないと語る。
「イエスが我々に『出て行く(Go)』という方式を示したのに対し、西欧の教会の大部分は『来てもらう(Come)』という方式だ」。ロング氏は、アルファコースがイエス・キリストを知らない人々のところへ「出て行く(Go)」伝道をサポートするものだと説明する。
「アルファコースを完全に行う時、神の計画に戻ってくる。神は我々を非常に愛しておられ、我々と関係性を持ちたいと願っておられる。そして、我々を通して世界と触れたいと願っているのだ。神は失われた人々を捜し求め、救うことを願われている」
「キリスト教の核心は本来、非常にシンプルなもので、悲劇が何かと言えば、我々がそれを非常に複雑で宗教的なものにしてしまっていることだ。これが人々を遠ざけている」と指摘する。「我々の言葉は非常に宗教臭く、我々は批判的で、頑固で、人々を見下しがちになってしまっている」
ロング氏はその結果、米国の16〜29歳の世代の多くがキリスト教会に対して否定的な印象を持ってしまっていると話す。ロング氏によると、この世代でキリスト教会に対して肯定的な印象を持っている人はわずかに16パーセント。福音主義の教会に限れば、教会を肯定的に見ているのはわずかに3パーセントの人々しかいないと言う。「我々がこの問題に対して何か行動を起こさなければ、全ての世代を失うことになってしまう」
経済危機や、自然災害、人生における悲劇に遭遇する中で、若者は将来を希望を持って見ることができないでいる。しかし、ロング氏はこれらの不安の多い状況の中で、「キリスト教は、我々はどこから来たのか、なぜ世界にはこのような混乱があるのか、我々はどこへ行くのか、という3つの質問に答えを与える唯一の世界観だ」と言う。
「我々は、これらの問いに対して、賢明で、理論的で、道理にかなった良い答えを与えることができる」とロング氏。アルファコースは挑発的な伝道ではない。イエスをそれぞれの人生の中に紹介する実践的で紳士的な方法だと強調した。
アルファコースは1970年代にロンドンで生れ、現在世界169カ国の教会で採用されている伝道プログラム。採用する教派も100を超え、これまでに1500万人が同プログラムを受けている。