津田塾大学(東京都小平市)の卒業礼拝が13日に行われ、同大の卒業生で翻訳家の中村妙子氏が「船出のとき」と題するメッセージを贈った。礼拝には卒業生、在学生、保護者や親族らを含む約150人が出席した。同大の卒業式は翌14日に行われた。
中村氏は、卒業式を明日に控えた卒業生らに向けて「希望」を主題に語りかけた。同氏は津田塾大で勉学に励んでいた自身の学生時代を振り返り、クリスチャンだった先輩の女性が戦争中に亡くなったことを回想した。その女性は伝道者として神の召命に従って生きようとしたが、家族の反対にあって断念した。しかし、それでも奉仕の精神を忘れず、卒業後は疎開先で児童たちを懸命に世話し続け、その無理がたたって1年後に亡くなったという。その後、姉の志に感銘を受けたその妹がキリスト教を信じるようになり、その後、牧師夫人となった。中村氏は、「希望は恥を来たらせない(ローマ5:5)」と述べて神の御心が継続するということを強調し、「未来に対する希望を失わないでほしい」と卒業生らに呼びかけた。
中村氏は敬虔なクリスチャンであり、翻訳家として活躍している。戦後、作家であり、大学人であるC・S・ルイスの著作を多く読んだことが、中村氏の歩みに大きな影響を与えた。
C・S・ルイスは数年前に映画化された「ナルニア国ものがたり」の著者として知られている。中村氏は、ルイスの著作「神と人との対話」を引用して、「神は私たち一人一人に勿体ないほどの関心を寄せてくださることはあっても、軽蔑したり、あら探しをしたりなさることはありません。神が私たちに目を留めていてくださるということを肯定するとき、私たちは初めて自分を神との関係において人格として考えるようになるのです」と語った。
中村氏は最後に、「この大学を後にして船出しようとしている一人一人にとって必要な勇気と、希望を与えてくださるように」と祈り、「小さなわだかまりがあるなら、この船出のときにさわやかに解消できるように。命ある日の間に、どうか、それぞれの道で、神さまの愛を思い知ることができるように、真善美をたゆまず追い求める心を与えてください」と祈った。
中村氏は、翻訳家として200冊以上の本を翻訳した。米国の女性飛行士アン・リンドバーグ氏や「ナルニア国ものがたり」の作者C.S.ルイス氏の作品など、英米文学の名作を多数翻訳している。最近では、「絵本 ライオンと魔女 ナルニア国ものがたり」(岩波書店)や伝記作品「ナルニア国の父 C.S.ルイス」(岩波書店)など、ルイスに関連した作品の翻訳を手がけている。