広島市中区のひろしま美術館で、ドイツの宗教改革者マルティン・ルターが16世紀前半に翻訳した「ドイツ語新約聖書(通称:9月聖書)」の初版本などを展示する「本を彩る美の歴史」展が開催されている。11月7日まで。
9月聖書はルターがヘブライ語・ギリシア語からドイツ語に翻訳したもので、1522年9月の出版。表紙は半革製で、ドイツの画家クラナッハによる木版画24枚も挿入されている。同聖書は活版印刷術を用いて初版は3000〜5000部印刷され、数週間で完売。12年間で80版以上を重ね、宗教改革の原動力となった。初版本は世界に39点しかなく、今回展示されている聖書は、人類史に残る書物を研究・継承するため初版本を収集している広島経済大学(広島市、前川功一学長)が先日、丸善を通じてドイツの古書店から入手したもの。
同展は、広島周辺に秘蔵される第一級の美術品、国宝の「平家納経」や近代の美本として名高いケルムスコット・プレスの全出版書籍などを展示し、本の歴史とその魅力を伝えている。
キリスト教関係の展示物としては9月聖書以外に、15世紀に活版印刷技術を用いて印刷された世界初の印刷聖書として知られ、世界に数冊しか残っていない「グーテンベルク聖書」(零葉)や、小磯良平の手による日本聖書協会「口語訳聖書」のための挿絵原画「エデンの園」などがある。