【CJC=東京】同時多発テロ事件から9年を迎えた9月11日、ニューヨーク・世界貿易センター跡地、ワシントンの国防総省、ハイジャックされた4機目の航空機が墜落したペンシルベニア州シャンクスビルで犠牲者への追悼式典が行われた。
ニューヨークでは、攻撃で倒壊したセンタービル跡地近くでのモスク建設計画をめぐって、賛成派と反対派の双方による抗議運動が行われた。
バラク・オバマ大統領は、米国民に「寛容」を呼び掛けてきたものの、反イスラム的な行動を阻止出来ず、米国内の亀裂の深さを改めて確認させるものとなった。
イスラム教の聖典コーラン焼却計画を打ち出していた米フロリダ州ベインズビルの教会『ダブ・ワールド・アウトリーチ・センター』のテリー・ジョーンズ牧師は結局、計画を撤回した。1小教会でありながら、焼却計画が発表されると、たちまちに全米に関心が広がった。
ホワイトハウスのロバート・ギブズ報道官は、「福音派による扇動的な」行動は、イスラム世界で激しい抗議を巻き起こす危険性があると懸念を表明した。アフガニスタン駐留米軍のデービッド・ペトレアス司令官は、「米軍部隊を危険にさらし、これまでの努力を危うくしかねない」とウォール・ストリートジャーナル紙に述べた。
一躍、時の人になったジョーンズ牧師は、センター跡地近くにイスラム・センターとモスクを建設する計画の主宰者イマム・フェイサル・アブダル・ラウフと会談して、建設地の移動を取り付けることを期待し、10日遅くニューヨークに到着した。ただ会談が、決まってはいなかったことも明らかになった。
同氏は、NBCテレビの『トゥデー』番組にも登場、予定していたコーラン焼却計画は撤回し、今後は行わない、と繰り返した。「神が止めるよう語られていることを感じる」と言う。焼却計画への反応で、イスラム教への関心を高めるという目標がある程度達成出来たからだ、と語った。
同氏の断念にもかかわらず、コーランを燃やしたり破ったりする行為が相次いだ。
ニューヨークのマンハッタン南部で男がコーランのページを破り、それに引火するなどした。ワシントンでは、ホワイトハウス近くで、「キリスト者」を名乗るグループがイスラム教を非難しながらコーランを数ページ破る騒ぎがあった。テネシー州ナッシュビル近郊では11日、ボブ・オールド、ダニー・アレンの牧師2人が自宅の庭でコーランを焼却した。米国憲法と市民を守るためとしている。
アフガニスタン北東部では12日、数千人が抗議デモに参加、解散させようとした保安部隊の銃撃を受け2人が死亡している。ロバート・ゲーツ国防長官は9日、ジョーンズ牧師に電話をかけ、コーラン焼却を実行すればアフガニスタンやイラクに駐留する米兵らの命を危険にさらすことになると警告していた。
一方、マサチューセッツ州聖書協会は、ジョーンズ牧師がコーランを焼いた場合、倍の冊数のコーランを拘置所、病院、救護所などに無償で提供する、と発表した。焼却にキリスト者が全員賛成してはいないことを示すため、と言う。