ある国では一つの教会における平均礼拝者数が75人。昨年はその国の70パーセントの教会で、キリスト教への改宗者がいなかった。またその国では、たった一人の新しい信徒が教会に導かれるまでに28年間もかかる。そして、洗礼を受けてクリスチャンになってもわずか8週間で教会を出て行ってしまう。突然だが、皆さんはこの国がおわかりだろうか。
実は、驚くべきことにこの国がアメリカである。米国は世界一キリスト教文化が浸透している「キリスト教国家」としてのイメージが強い。しかし、今米国では、新しい教会が建てられるどころか毎年3000個の教会がつぶれ、空き家と化している。信徒たちは行き場を失い、クリスチャンとして生きることをいとも簡単にあきらめてしまう。
このような米国キリスト教界の危機的な現状を受け、今米国で最も影響力があると言われているウィロークリーク・コミュニティー教会は、マタイの福音書28章19節に記された大宣教命令(Great Comission)をビジョンとして掲げ、米国教会の再建を目指している。
「教会が発展しない理由としては、ビジョンがなかったり熱情が無かったりしていることが第一にあげられる。またはビジョンがあって祈っていても、それを実現するための具体的な戦略やトレーニング、システム、ゴールやアクションがない」。8日に来日講演した、米ウィロークリーク・コミュニティー教会アソシエーション副代表のゲアリー・シュアムライン師は、WCJ主催のセミナーにおいて米国教会の問題点を上記のように明確に指摘した。
ウィロークリーク・コミュニティー教会では、信徒一人一人の霊的な成長と教会の健全な発展のために、「5G]という宣教戦略を打ち出し、実行している。
「5G]とは、c[1]Grace(恵み)、関係伝道を通してノンクリスチャンと友達となり、交流の輪を広げていく。初代教会のように神さまのすばらしい恵みを体験し、分かち合っていく。c[2]Growth(成長)、昨日よりももっと主イエス・キリストに似ることができるように努める。今日は昨日よりもっと神様を愛すること。成熟したクリスチャンを目指していく。自分の目的を、あらゆる手段を通してキリストの生を目指すことに設定する。c[3]Group(小グループ)、「Do life together」を合言葉にしている。苦しむ時に一人で悩まない。喜びを共にし、使徒の働き2章にあるように「家に集まり共にする」を基本する。c[4]Gift(賜物)、一人一人に与えられた聖霊の賜物を大切にする。「しかし、みなの益となるために、おのおのに御霊の現れが与えられているのです」(第一コリント人への手紙12章7節)の御言葉に従い、体の部分は多くても、キリストの体の一つ一つであることを覚える。自分に与えられている賜物が教会全体のためにある。牧師の役割は、賜物を整え一人一人の信徒の賜物を探してあげること。c[5]Good Steward(良い管理者)、神様に最後に捧げるのがお金である。時間もお金も神様から与えられたもの。それをどのように管理していくかが大切。
またシュアムライン師は、「ビジョンが大きければその分だけそれを導くためのリーダーが必要であり、リーダーが育成されなければ発展は望めない」とも語り、若い指導者を育成していくこのと重要性を強調した。
さらに、リーダーの姿勢については、ローマ人への手紙12章8節の御言葉を引用し、「勧めをする人であれば勧め、分け与える人は惜しまずに分け与え、指導する人は熱心に指導し、慈善を行う人をそれを喜んでしなさい」と説き、仕えることの大切さを教えた。
同師は、リーダーの問題点に関して、高齢のためにそれ以上の変化を臨むことができないリーダーが、引退せずに自分の位置に固執する傾向があることに触れ、「私が変化できなくなれば、私の立場をもっと優秀な人に譲る。神様が私に隠退を願われるのなら喜ぶ。私はアドバイザーとして助言していくことができる」と述べた。同師を通して、「仕えるリーダー」としての模範的な姿が垣間見えた。
加えて、ルカの福音書15章に記されている失われた一匹の羊のたとえを用いて、「私たちは救われた99匹の羊。99匹は安全だ。イエス様が探したのは1匹だった。私は(救われた99匹だから)天国へ行くことが出来るけど、私たちは教会の外にいるまだ救われていないたくさんの人たちに伝えなければならない」とも語った。
同師は自身の証しとして、「以前は、私はクリスチャンであったが、違う主に仕えている姿があった。ビジネスマンにはよくありがちなビジネスを偶像としてしまう姿があった。もっと感謝していけば、神に仕える偉大な僕になれる。人々が私を評価するのではなく、神様がよくやったと言ってほしい」と語った。
シュアムライン師は91年にウィロークリーク・コミュニティー教会に来た。その斬新な礼拝スタイルやコミュニティー形成に驚き、その後94年に同教会に献身。同教会の創始者であるビル・ハイベルズ師の「あなたは、どんな遺産を残すのか」というタイトルの説教を聞いて、ビジネスマンとして大きなオフィスも持ちビジネスを成功させていた自分の生き方に疑問を抱き、退職した。18ヶ月間祈りながら生活し、神様が自分にリーダーシップの賜物を与えてくれたと気付いたという。