2025年までに世界中の全ての言語に聖書を翻訳する――世界最大の聖書翻訳宣教団体「ウィクリフ聖書翻訳協会」は、歴史的事業に終止符を打つべく、急ピッチでその活動を推進している。
6905あると言われる全世界の言語のうち、約2200が聖書未翻訳の言語だ。これらの言語を使う約3億5000万人は、母国語で聖書を読むことができないでいる。
同協会が掲げる「2025年までに全世界の言語に聖書を翻訳する」というビジョンは、99年のウィクリフ国際会議で打ち立てられた。その後、少数言語グループへの聖書と識字教育提供を目的に始まった「ラスト・ランゲージ・キャンペーン」を通して08年に具現化された。
同協会は99年、聖書を全ての言語に翻訳するには140年から150年を要すると予測。当時は1年に平均20言語というペースで新たな翻訳プロジェクトに着手していた。しかし10年後の09年には、1年で109言語の翻訳に着手するという大幅なペースアップを果たした。
ラスト・ランゲージ・キャンペーンのエグゼクティブディレクターを務めるポール・エドワーズ氏は、昨今の目まぐるしい技術の発展など、「多くの要因が聖書翻訳の急速化に貢献している」と語る。
以前、少数民族とともに生活する翻訳者たちが翻訳案の点検を受ける際、丸2日を掛けてトラックやボートでジャングルを越えていたこともあったという。現在はオンラインで翻訳案を提出し、数時間で責任者から回答を得られるようになった。
また、聖書翻訳の戦略面でもよりスピードを重視した方式にシフトしている。従来の「1チームが1言語を」という方式を大きく転換。5つから12個の似通った言語を1つの翻訳チームが同時に担当することで、速度と効率性を高めた。また、旧約の創世記から順に翻訳していた以前の方式を改め、現地人に対してより波及力の強い新約聖書の主要箇所を優先する方式を採用している。
残り約2200言語への聖書翻訳を行うためには総額約10億ドルが必要だというが、集まっている資金はまだ約2億ドル。エドワーズ氏は、「神が2千年以上にわたり導いてくださったこの事業を、私たちの時代に終わらせることができると考えてみてください」と、さらなる祈りと献身を呼び掛けている。