・・・イエスが舟から上がられると、すぐに、汚れた霊につかれた人が墓場から出て来て、イエスを迎えた。この人は墓場に住みついており、もはやだれも、鎖をもってしても、彼をつないでおくことができなかった。・・・それで彼は、夜昼となく、墓場や山で叫び続け、石で自分のからだを傷つけていた。彼はイエスを遠くから見つけ、駆け寄って来てイエスを拝し、大声で叫んで言った。「・・・どうか私を苦しめないでください。」それは、イエスが「汚れた霊よ。この人から出て行け。」と言われたからである。・・・(マルコの福音書5章1節〜20節)
日本では、最近、オカルトや、スピリチュアル、ニュー・エイジと呼ばれる、人が勝手に作った占いやまじないが流行っています。そういう中で、私たちの教会は、まことの救い主イエスを宣べ伝える伝道の教会であることを思い起こさなければなりません。
今日の聖書箇所は、イエスと弟子たちがゲラサ人の地へ行き、汚れた霊につかれた男と出会った話です。昼夜叫び続け、鎖も引きちぎる常軌を逸した力が彼に働き、自分の身体をかきむしり、石で打ちたたくことでしか、怒り、不安、恐れを表現することのできない男でした。
この男の姿は、イエス・キリストに出会う以前の、霊的には死んだ状態で、本来神が与えて下さる人としての生き方から、遠く離れてしまっている人間の姿を表しています。
2010年の現代も、肉体は生きていても、霊的には死んだような人たちがたくさんいるのです。家族があっても温かみが感じられない、不安で、薬を飲まなければ眠ることができない、リストカットをしたり、必要以上の睡眠薬を飲んだり、自ら命を絶つところまでいってしまう人もいます。
主イエス・キリストの癒やしとは、医者が治療する医学の世界とは別次元のものであることをはっきりと知ってほしいのです。イエス・キリストの癒やしがもたらすものについて、3つのことを学びたいと思います。
1.多くの悩みや苦しみからの解放
イエスは、この男を支配している霊的なものに対して「お前の名前は何だ」と問いかけられました。汚れた霊は答えます。「レギオンです。私たちはたくさんいますから」。レギオンとは、ローマ帝国時代の、約6000人の軍隊の部隊を表す言葉で、多くの者たちが群れているイメージがあります。
人ひとりの心の中には、実に多くの悩み、恐れ、不安や悪い霊的な力が宿るものなのです。イエス・キリストが追い出した汚れた霊が乗り移った2000匹もの豚は、気が狂っておぼれ死んだと、物語は続きます。それほど多くの悪霊がこの男の中に巣くっていたのです。
現代の私たちも、インターネットの匿名などになると、汚い言葉を書き込んだり、「人の物を盗みたい」「人を殺したい」「自分も死んでしまいたい」、そんな破壊的な衝動が、際限なく宿ったりするのです。
今、日本では、万引が大問題になっています。ひとつのお店だけで、年間、万引される金額が、何百万円、何千万円にもなると聞きます。この男より、現代のごく普通の人間がかかえている悩みの方がもっと複雑かもしれません。しかし、この男のように、イエス・キリストと出会う時に、人は悪の力から解放されていきます。
2.私たちを変え、成長させる
悪霊に取りつかれていた男が、着物を着て正気に返ってすわっているのを見て、人々は恐ろしくなった、とあります。狂った獣のように走り回っていた男が、真人間になり、穏やかな表情でイエスの前にすわっていたのです。イエス・キリストの癒やしは、病や悪の力に押さえ込まれていた私たちを、本当の自分自身に変え、私たちの性格、生き方、人間関係や人生の有様までをガラリと変えるのです。
癒やしの業は、単なる病気の回復ではなく、イエス・キリストが私たちに与えて下さる救いの業の重要な一部です。救いは人生の全部に及び、性格を心の内側から変え、家庭の雰囲気、仕事の働き方、人々に対する接し方、人生で選び取るものや、生きざまそのものを変えていきます。
3.周りに良い影響を与え幸せな空間をつくる
彼の癒やしは、個人的に受けた恵みにとどまりませんでした。「お供をしたい」と言った男に、イエスは「あなたの使命は他にある」と言われました。彼は人々に証しをし、彼の周りの人々に神の憐れみ、祝福、愛、救いがどれほど豊かであるかを伝えていきました。イエスを信じて、彼の生きざまが変わったのです。
イエス・キリストの恵みをいただくと、私たちの内側からよいものが人々に伝わっていくので、感謝しましょう。それは不安や迷いではなく、喜び、笑顔、平安、希望、人々と分かち合う愛です。私たちは今日、イエスの恵みをしっかりと受け止めようではありませんか。情報や人間の力、ノウハウや科学的な知識だけでなく、霊的な、人間の思いを超える力、私たちに命を与える神ご自身の力をつかみ取る者になりたいと思います。
万代栄嗣(まんだい・えいじ)
松山福音センターの牧師として、全国各地、そして海外へと飛び回る多忙な毎日。そのなかでも宗教を超えた各種講演を積極的に行っている。国内では松山を中心に、福岡、鹿児島、東京、神戸、広島、高松にて主任牧師として活動中。キリスト教界のなかでも、新進気鋭の牧師・伝道者として、注目の的。各種講演会では、牧師としての人間観、ノイローゼのカウンセリングの経験、留学体験などを土台に、真に満足できる生き方の秘訣について、大胆に語り続けている。講演内容も、自己啓発、生きがい論、目標設定、人間関係など多岐にわたる。
また、自らがリーダー、そしてボーカルを務める『がんばるばんど』の活動を通し、人生に対する前向きで積極的な姿勢を歌によって伝え続け、幅広い年齢層に支持されている。
国外では、インド、東南アジア、ブラジル等を中心に伝道活動や、神学校の教師として活躍している。