明治維新以降、国策により北海道に多数の開拓移住者が入殖した。その際、住み慣れた郷里を離れて全く未知の世界、しかも厳しい気候を持つ北辺の地に身を委ねる決意をすることには大きな精神的なエネルギー、即ちある種の「開拓者精神」が必要であったと考えられる。
本書成立の基本的動機は、団体移住者たちの北海道移住の動機や目的、そして苦難を耐え忍び、克服して開拓の実を挙げた人々を支えた精神的基盤がなんであったのか、またこのような精神と実際の開拓実績、コミュニティ形成の成果との関係がどのようなものであったのかという歴史的な関心である。
本書が考察の対象としたのは、なんらかのキリスト教的な意図や動機を持って明治期に北海道に集団移住して未開地の開拓に従事し、現在の自治体の基礎を築いた全ての団体「赤心社」(明治13年、神戸から現浦河町)、「インマヌエル団体」(明治25年、京都・埼玉から現今金町)、「聖園農場」(明治25年、高知から現浦臼町)、「北光社」(明治31年、高知から現北見市)、「北海道同志教育会」(明治31年、新潟・山形から現遠軽町)である。
本書の主題は、これらの団体の移住動機や移住の経緯、そして移住後のコミュニティ形成のありようを研究過程で新たに発見、解読した古文書を含めた一次史料の精査と、より正確な史実の再構成に基いて精神史的、宗教社会学的観点から考察、解明することである。(購入する)
著者: | 白井暢明 |
価格: | 税込7,350円 |
出版社: | 北海道大学出版会 |
発売日: | 2010年4月16日 |
ページ: | 354ページ |
【著者紹介】
白井暢明(しらい・のぶあき):1943年室蘭市生まれ。北海道大学大学院文学研究科博士課程中途退学。北海道大学文学部助手、旭川工業高等専門学校教授などを歴任し、名寄市立大学教授、旭川工業高等専門学校名誉教授。