世界的に著名な米国人伝道者のフランクリン・グラハム氏は、2010年はある国では迫害があり、同性愛や中絶問題などを巡っては、福音を語ることが差別的な発言と受け止められるような困難に直面するかもしれないと述べる一方、「私は福音を恥とは思いません」(ローマ1:16)と語って2010年をスタートさせた。
「福音を語ることがヘイトスピーチ(差別的発言)と言われるような時代が非常に近づきつつある。恐らく、それは私が生きているうちにだ」
福音派伝道者のグラハム氏は、同性愛や中絶の容認が拡大しつつある現代の風潮に危機感を示し、これらの問題について聖書に基づく信仰的立場から発言することが、「差別的発言のない文化(politically correct culture)」によって禁止される時代がくるかもしれないと予想した。
しかし、「私は福音を恥とは思わないし、また(福音を伝えることを)恐れたりはしない。我々の罪のために死なれたキリストの犠牲と勝利の復活を、我々は生涯証しし続けるのだ」と語った。
米国では近年特に同性愛や中絶を巡って議論が過熱している。米聖公会では昨年、女性や同性愛者の聖職者就任を巡って教団内の保守派が正式に離脱し、新たな教団を設立。米福音ルーテル教会でも昨年、総会で同性愛聖職者を認めることが決定されたが、反対派はすでに教団とは独立したグリープを組織し、今年には新たな教団が誕生する見通しだ。
昨年10月に成立した憎悪犯罪(ヘイトクライム)修正法案を巡っても、ヘイトクライムの対象を同性愛やアイデンティティ、障害などに拡大されたことについて、「宗教的信念に基づいて妊娠中絶や同性愛に反対している聖職者たちが不当に差別される恐れがある」などと、教会内でも賛否両論含め注目を集めた。
一方、グラハム氏の年頭のこうした意志表明には、昨年12月にデンマークのコペンハーゲンで行われた国連気候変動枠組み条約国会議(COP15)などの動きが、背景の一部にあるようだ。
グラハム氏は、COP15により、環境問題の解決に向け我々が一歩踏み出したということを、世界中の人々が認めることだと述べる一方、「しかし、このような集まりで起こったことは、私に一つの恐怖を覚えさせる」と言う。
「限られた資源の適正な管理という当然な関心は、神による創造を偶像礼拝と同程度の地位と見なす急進的て無神論的な世界観によって置き換えられてきた過去があるからだ」とその理由を説明する。
「神を否定する人々、また人間が神の形に似せてつくられたということを否定する人々は、創造者ではなく創造物に礼拝し、仕える」「主イエス・キリストの救いの福音を伝えるという我々に与えられた責任が、かつてないほどに重要になっていると感じる」と語った。