さて、・・・イエスが十二歳になられたときも、両親は祭りの慣習に従って都へ上り、祭りの期間を過ごしてから、帰路についたが、少年イエスはエルサレムにとどまっておられた。両親はそれに気づかなかった。・・・ようやく三日の後に、イエスが宮で教師たちの真中にすわって、話を聞いたり質問したりしておられるのを見つけた。・・・イエスは両親に言われた。「・・・わたしが必ず自分の父の家にいることを、ご存じなかったのですか。」・・・イエスはますます知恵が進み、背たけも大きくなり、神と人とに愛された。(ルカ2章41節〜52節)
今日開いた聖書のお言葉は、イエスが12歳になられたときの物語です。クリスマスは、イエスの誕生という、点としての出来事だけで終わらせるのではなく、聖書の約束された救いの成就まで続く線にしなくてはなりません。お生まれになった救い主であるイエス自らがその大切さを私たちに教えてくれています。3つのことを押さえておきましょう。
1.家族の一員からひとりの信仰者への成長
聖霊の力によってイエスの誕生が約束され、それは事実となり、その課程では不思議な出来事が次々と起きました。でも、12歳になるまでのイエス・キリストは、家族の守りと導きの中にあったのです。
モーセがエジプトからイスラエルの人々を導き出した出来事を記念する過越の祭りを祝うために、イエスは家族と共にエルサレムの神殿へ上られましたが、その帰り道、イエスの姿が見当たらなくなったのです。このエルサレムへの旅は、イエスご自身が単なる家族の一員から、ひとりの信仰者としての歩みをはじめられたプロセスでした。
家族が家路に着くとき、イエス・キリストはひとりで神殿にとどまられ、神殿にいた教師たちと聖書の御言葉について語り合っていたのでした。
私たちも信仰が単なる1つの点から線へと成長するとき、常に家族や周りの信仰者たちに守ってもらうだけの存在から、ひとりの信仰者として自分のあり方を確認すべきときがあるのです。
2.人との交わりから神との交わりへ
マリヤの言葉に対して「わたしが必ず自分の父の家にいることを、ご存じなかったのですか。」とイエスは語られました。ここでの自分の父とは、イエス・キリストを育ててくれた父ヨセフではなく、聖霊によってイエスに命を与えられた、父なる神のことです。
その言葉には、12歳のイエスの心の中に、それまで成長の過程で大切にしていた家族や親族、友達などの、人々との交わりの中だけに生きる者から、神との交わりに生きる者への成長を見ることができます。私たちも人としての肉体の成長から、神と人とに愛される者への信仰の成長がどうしても必要なのです。
私たちの肉体や知識、知恵が子供から大人へと成長していくように、私たちの魂の成長、信仰の成長ということを意識したいのです。
3.常に信仰は成長させていくべきもの
イエスは確かに私たちの汚い心の飼い葉おけに宿って下さいました。しかし、その恵みのままでとどまっていてはいけません。イエスご自身もまた点から線へと成長していかれ、この後人々の前に救い主としてのご自身の姿を現わされるにいたるまで成長され続けたように、私たちもイエスを心に信じたという1つの出来事で終わるのではなく、そこから成長するものでありたいと思います。
もちろん私たちを励まし、はぐくんでくれる家族や、信仰の仲間、神の大家族がいてくれることは本当に幸いなことです。しかし、いつまでも誰かを頼り続け、誰かと一緒にいるというだけでは困ります。見かけは同じようなクリスチャンでも、自ら信仰を働かせて立つことのできるひとりの信仰者としての成長を目指していきたいのです。
人からの笑顔や親切だけを教会で求めていると、失望してしまうことがあります。完璧な人間はいないからです。しかし、だからといって神の恵みは変わりません。
私たちは、人々との交わりからさらに神との交わりへと深まる、点から線への成長を頂きましょう。「私は、クリスチャンとして歩む」と、心に命じて下さい。そのためには、祈りや礼拝のチャンスを決して逃さず、新しい1年に、信仰者としての成長や目標やビジョンを入れた、価値ある目標を持つことです。
単なる人間的な部分の成長、前進、発展から、信仰の成長、霊的な成長をいつも意識しましょう。
万代栄嗣(まんだい・えいじ)
松山福音センターの牧師として、全国各地、そして海外へと飛び回る多忙な毎日。そのなかでも宗教を超えた各種講演を積極的に行っている。国内では松山を中心に、福岡、鹿児島、東京、神戸、広島、高松にて主任牧師として活動中。キリスト教界のなかでも、新進気鋭の牧師・伝道者として、注目の的。各種講演会では、牧師としての人間観、ノイローゼのカウンセリングの経験、留学体験などを土台に、真に満足できる生き方の秘訣について、大胆に語り続けている。講演内容も、自己啓発、生きがい論、目標設定、人間関係など多岐にわたる。
また、自らがリーダー、そしてボーカルを務める『がんばるばんど』の活動を通し、人生に対する前向きで積極的な姿勢を歌によって伝え続け、幅広い年齢層に支持されている。
国外では、インド、東南アジア、ブラジル等を中心に伝道活動や、神学校の教師として活躍している。