今年創立100周年を迎えるルーテル学院大学と日本ルーテル神学校が記念して開催している連続神学講演会の第3回目の講演会が9月4日、同大学で開かれた。講演には、米国を代表するエキュメニズム神学者として知られるマイケル・ルート博士(米サザンルーテル神学校教授)が来日し、「エキュメニカルの冬の時代」などと言われる現代の流れに対し、エキュメニズムがこれまでもたらしてきた結実を一つずつ指摘。暖かみがなく不活発というイメージや、春の訪れを安易に示す「冬」という表現は、現在のエキュメニズムを正しく表していないとし、「(エキュメニズムが)氷河期にあるのではなく、難しい課題への挑戦にあるのではないか」と言い、カナンの地への途上にある荒野を旅している状態と言えると語った。
ルート氏は、世界のエキュメニカル運動における歴史的な第一歩と言える、ルーテル世界連盟(LWF)−ローマ・カトリック教会間で出された「義認の教理に関する共同宣言」(99年)や、米福音ルーテル教会(ELCA)と米聖公会間のフルコミュニオン(完全相互聖餐)実現の契機となった「共同の宣教に召されて」(00年)を起草したメンバーの一人で、ルーテル派教会のエキュメニカルな対話において重要な役割を果たしてきた。現在もLWFエキュメニカル研究所副所長などを務める。
「エキュメニカルな対話におけるルター派、過去と未来」と題した講演では、エキュメニカル運動の現状が決して楽観的な現状ではなく、「行き詰っている」と言えるような状態かもしれないが、「教会が分離していることへの痛みが弱くなっているのではないか」「他の課題の方が緊急性を要する課題だと感じてはいないか」と述べ、教会の一致が緊急を要する重要な課題であることを訴えた。
一方で、神学者間の対話や、教派間で結ばれた何らかの合意文といった教理的な一致だけがエキュメニカルな運動ではなく、信徒間におけるエキュメニカルな交わり、あるいは奉仕の面における一致と協力についても、その重要性を指摘した。
連続神学講演ではこれまで、6月にロバート・コルブ博士(米コンコーディア神学校教授)、7月にヨアヒム・リングレーベン博士(独グッティンゲン大学教授)らが講演。最後となった今回の講演には、ルーテル教会の関係者ら約40人が参加した。
ルート氏の講演後には質疑応答の時間が設けられ、参加者からは「他宗教との対話、人類全体の一致についてどう考えるか」「日本のような小さな教会がエキュメニズムにどう協力できるか」などの質問が寄せられたが、ルート氏は「エキュメニズムはすべてを解決するものではなく、信仰に対して深い理解を与えてくれるもの。人類全体の一致というのはむしろ宣教の目的で、エキュメニズムは教会に仕えるもの」「大きくなってから始めるといっても始められるものではない。小さくとも積極的に大胆に、教会の一致にコミットしていく必要がある」などと応じた。