紛争、貧困、そしてエイズ。アフリカを取り巻く社会問題は年々深刻化している。その中で、弱者である子どもたちはいま最も厳しい現実に直面している。
特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン(東京都新宿区)は、アフリカで生きる子どもたちの姿を実感できる体験型イベント「教科書にのっていないアフリカ」を今年6月に福岡で開催する。「貧しさのなかで生きる世界の子どもたちの現実を、1人でも多くの方に、より深く知ってほしい」という願いから開発されたこのイベント。臨場感あふれるサウンドやビジュアルを通して、参加者が現地の子どもたちの生活を体験できる。
06年にアメリカのニューヨークで開催したのを皮切りに、カナダ、韓国、オーストラリア、ニュージーランドなど世界各地で開催。これまでに16万人以上を動員した。日本では07年から開催を始め、これまでに東京、神戸、北海道で約8500人がイベントを体験した。
イベントで疑似体験できるのは、同団体が支援活動の中で実際にかかわってきたベアトリス、オリビア、エマニュエル、スティーブンの4人の子どもたちの人生。ベアトリスは両親をエイズで亡くし、オリビアは強姦に。エマニュエルは母親を亡くして兄フレッドと二人きりで過酷な現実に直面する。
スティーブンは真夜中に自宅で寝ているところを反政府勢力「神の抵抗軍(LRA)」に襲われて誘拐された。「奴らは銃を持っているので逆らえなかった。背中に銃をつきつけられ、お父さんやお母さんのいる家からどんどん遠ざかり、僕たちは10キロ以上歩かされた」武装した男たちから銃を渡され、一緒に戦いに行くよう命令されるスティーブン。自分の命を守るためにそこで自らも銃を使ってしまう。
同事務局長の片山信彦氏は、「この体験型のイベントで一人の子どもの目線で、見たり、聞いたり、感じたり、考えたりしてみてください。きっと何か新しい変化がみなさんの心の中に起こることでしょう。皆さまのご来場を心よりお待ち申し上げています。ぜひ体験してみてください」と語っている。
イベントは入場無料。6月3日から7日までの5日間、福岡県福岡市中央区天神1丁目1番1号のアクロス福岡円形ホールで開催される。時間は午前11時から午後7時半(最終入場時間午後7時、最終日のみ入場は午後4時半まで)。
同団体は、貧困、飢餓、災害、戦禍などで苦しんだり抑圧されている人々が、明日を夢見て希望で胸をふくらませることができる社会の実現を目指し、1987年10月に国際NGO「ワールド・ビジョン」の一員として設立。キリスト教精神に基づいた国際NGOとして、開発援助、緊急援助、アドボカシー活動を行っている。
現在、4万5千人以上のチャイルド・スポンサーの支援や600人以上のボランティア、募金者、企業・団体からの支援、また国際機関や他NGOとの連携によって活動している。