準強姦(ごうかん)や強制わいせつなどの複数の罪で起訴され、1審で懲役23年を言い渡されていた韓国発祥の新興宗教団体「摂理」の教祖・鄭明析(チョン・ミョンソク)氏(79)が、控訴審で懲役17年を言い渡された。「キリスト教福音宣教会」を正式名称とする摂理は、「JMS」や「CGM」の略称でも知られ、キリスト教の異端でカルトとされる。
韓国の大田(テジョン)高裁(キム・ビョンシク裁判長)は2日、1審判決の量刑の不当性を主張した鄭氏の主張を一部受け入れ、1審判決の懲役23年から6年減刑した懲役17年を言い渡した。
鄭氏は2018年2月から21年9月にかけて、韓国中部の忠清南道(チュンチョンナムド)錦山(クムサン)郡にある摂理の本部「月明洞(ウォルミョンドン)」の修練院などで、香港、オーストラリア、韓国出身の女性信者3人に対し、性的暴行やわいせつ行為を行ったとして、大田地裁が昨年12月、懲役23年を言い渡していた。
1審同様、控訴審でも懲役30年を求刑した検察は、「被告人は累犯期間に同種の犯罪を犯した」「被告人は宗教団体の総裁として宗教的地位を利用し、継続的に信者だった被害者を洗脳した。性的暴行をまるで宗教的行為であるかのように正当化した」などと主張していた。
また、「被告人は犯行を否認しており、反省していない」とし、「協力者が犯行を隠蔽(いんぺい)している点、信者らが被害者に対し2次加害をしている点などを考慮すると、1審より重い刑が言い渡されるべきである」と強調していた。
一方、鄭氏の弁護側は、被害者が録音した犯行時の音声データが操作されていたとして、その証拠能力に疑義を提起。国立科学捜査研究院の鑑定で、犯行時のものではないとして除外された音声データの分析を基に、鄭氏の普段の会話内容などがつなぎ合わされて、犯行時の音声データとして操作されたと主張した。
鄭氏は、被害者らは洗脳されておらず、抵抗できない状態ではなかったとし、自身は「神ではなく人間であることを明らかにした」と主張。1審から起訴内容を否認し続けている。
鄭氏は01年8月から06年4月にかけ、マレーシア、香港、中国で当時20代の韓国人女性信者4人に対し、わいせつ行為や性的暴行を行ったとして、09年4月に強姦致傷罪などで懲役10年の判決が確定。服役後の18年2月に出所していた。