【CJC=東京】英国では図書館職員が、聖書を書架の一番上に置くよう指示されているという。米国の宣教専門ANS通信が伝えた。デイリー・メール紙によると、イングランド中部のレスターの図書館で、イスラム教徒から、コーランが書架の低いところに置かれていることに苦情が出された。そこで当局が政府との協議を経て、神聖な書物は全て平等に書架の最上部に置くことにしたと言う。『博物館・図書館・文書館協議会』がアンディ・バーナム文化相の諮問に答えた。同協議会は非政府組織類似団体。
英国の図書館で開架式を採用し、誰もが直接に図書を見て取り出せる場合、書架の一番上は、高すぎて目に着きにくいことが問題の背景にある。「キリスト教関係書で歴史的に文学的な価値があるものでも、多くの利用者の目に触れなくなるということだ」とスティーブ・ドウティー氏がデイリー・メール紙に寄稿している。
同協議会は、レスターのイスラム教徒が、コーランを全てが重要な神の言葉だという信仰の下に、コーランを一番上の棚に移したのが事の始まり。同市の図書館員が、イスラム教団体連合会と協議したところ、宗教関係文書は皆、書架の最上部に置くべきだ、と勧告されたという。
シンクタンク『シヴィタス』のロバート・ウイーランは「図書館や美術館は礼拝するところではない。特定の宗教信仰に即して運営してはならない。図書館運営の原則に反しており、危険な傾向だ」と言う。
図書を誰でも利用出来るようにという考え方は中世ヨーロッパで確立された、と同氏。「宗教改革の核心は誰も聖書を読めることにあった」と指摘する。
『キリスト教研究所』のサイモン・カルヴァート氏は「図書館運営方針が、1グループによって左右されるなら、それは問題だ。聖書を手の届かない場所に置くとなると特におかしい。再検討してほしい。イスラム教徒が自身の文書を重んじるのは理解するが、と言って公立図書館で宗教書を手の届かない場所に置くことには反対だ」と述べている。
イスラム教徒が公共の場でより大きな役割を果たすよう勧めているシンクタンク『エンゲージ』のイナヤ・ブングラワラ氏は「もしもイスラム教徒がコーランを書架の上の方に置いてほしいと考え、図書館規則にも問題がないなら、それは喜ばしいことだ。ただキリスト者が聖書を同列に扱ってほしくないのなら、同じに扱わなくても良いのではないか」と言う。
英国国教会のクリス・サグデン司祭は「聖書がラテン語で書かれてあり、聖職者だけが読むもので、信徒が読むことで汚されることのないように、と考えられていた中世に回帰するものだ」と指摘している。