米国の映画監督マーティン・スコセッシ氏が今年末から、遠藤周作の小説『沈黙』を原作にした映画の撮影を開始する。『沈黙』の映画化はスコセッシ監督が10年以上前から構想していたもので、現在ダニエル・デイ・ルイス、ベニチオ・デル・トロ、ガエル・ガルシア・ベルナルら俳優に出演依頼の交渉を行っているという。米国のエンターテイメント情報誌『バラエティ』が伝えた。
小説『沈黙』は、遠藤が17世紀江戸初期のキリシタン弾圧について、史実・歴史文書に基づいて創作した歴史小説。実在するイエズス会の日本管区長代理を務めたポルトガル人司祭のクリストファン・フェレイラが登場し、フェレイラの棄教を聞いた弟子のセバスチャン・ロドリゴが真相を求めて日本に侵入。幕府から激しい弾圧を受ける隠れキリシタンへの布教活動に身を捧げるが、裏切りにより捕らえられる。神と信仰の意義を命題に描いた作品。
世界13カ国語で翻訳され、英小説家のグレアム・グリーンは同小説を評価して、「遠藤は20世紀のキリスト教文学で最も重要な作家である」と述べた。また、戦後の日本文学の代表作としても高く評価されている。
撮影は今年中にニュージーランドで始まる予定。制作費はハリウッド色の無い低予算に抑えるという。
スコセッシ監督はこれまで、カンヌ国際映画祭(86年)、 ヴェネツィア国際映画祭(90年)、英国アカデミー賞(90年)、ゴールデン・グローブ賞(02年)、アカデミー賞(06年)などで監督賞を受賞。ニューヨーク大学映画学部で学んでいた初期には、今村昌平監督の『豚と軍艦』や、小林正樹監督の『切腹』『上意討ち・拝領妻始末』など日本映画からも大きな感銘を受けたとしている。