今年5月21日から導入が始まる裁判員制度について、「さばいてはいけません。さばかれないためです」(マタイ7:1、新改訳聖書)などと聖書に書かれていることもあり、自らの判断が他人の死刑に関与する可能性もある同制度にどのように対応するべきか、キリスト教会では一つの課題となりそうだ。
同制度が宗教界で議論を呼んでいると報じた読売新聞によれば、日本アッセンブリーズ・オブ・ゴッド教団・神召キリスト教会(東京都北区)の山城晴夫牧師は、「様々な考え方があり得るが、非常に重い問題で、すぐには答えが出ない」と回答。まだ、明確な対応の仕方を見出せていないことを語った。
一方、カトリック中央協議会は同紙に対して、「私的な裁きは認められない」との立場を示したが、「法治国家の正式な裁判制度まで否定はしていない」と答えた。しかし、「被告の人権への配慮や国民の十分な理解が必要だと思う」と人権面での配慮の必要性を語った。
実際に裁判員が参加して行われる裁判は今年7月頃から始まる見通しで、同制度により国民が刑事裁判の審理・判決に参加することになる。同制度によって裁判所は今後、原則として裁判官3人、裁判員6人で構成されるようになり、裁判員は20歳以上の有権者から無作為に抽出して選任される。
同紙によれば、国民が刑事裁判に参加するという歴史が長い英国やドイツでは、聖職者の裁判への参加が法律で禁止されているという。一方、日本の同制度を定める「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(裁判員法)」では、宗教上の理由などにより「裁判参加で精神上の重大な不利益が生じる」と判断された場合は、辞退が認められることになっている。