著書『人生を導く5つの目的』で売り上げ3000万部以上のベストセラーを記録した米国のリック・ウォレン牧師(サドルバック教会)が、宗教や精神世界を扱う世界最大のコミュニティサイト「ビリーフネット」のインタビューで、社会的福音(Social Gospel)が、「キリスト教の衣を着たマルクス主義」であると指摘した。
「我々は贖罪、十字架、悔い改めに関心を注ぐ必要はない。我々がなすべきことは、この世界の社会構造において担うべき役割を果たすことであり、我々がこれらの社会構造をより良いものに構築するのであれば、世界はよりよいものとなる」。12日に掲載されたインタビューでウォレン牧師は、社会的福音を支持する人々の根底にこのような思想があると指摘した。
「これは様々な面において、キリスト教の衣を着たマルクス主義にほかならない」とウォレン牧師は批判し、「当時は、我々が社会を修復すれば人類はおのずと良くなるという思想が流行し、心に対して関心が向けられることはなかった」と語った。
またウォレン牧師は、世界で最も積極的に社会活動に携わるキリスト者のうち一部が、自らをキリスト者と称してよいかどうかを検証をせず、魂に対しては目を向けずに貧困や疾病、社会正義、人種問題など肉的な問題だけに目を向けて、この世界を良いものとしようと求めたと指摘した。
その一方で、これらの肉的な問題にまったく無関心で、魂についてや個人的な道徳問題にだけ関心を寄せるキリスト者に対しても賛成できないと指摘した。
しかし最終的には、「誰が正しいのか。私の考えではどちらも正しい」「指導者としての私の願いは、これらの二つの立場が和解することだ。私はこれら両方が必要だと思う」と結論。「イエス・キリストが肉体と魂の両方に関心を寄せたことは明白だと思う。イエスは、個人的な問題と社会的な問題の両方を取り扱われ、私は両方とも重要だと思う。しかし、これらの間にこれまで隔たりがあったと思う」と語った。
また、歴史的に見て社会に変化が起こるとき福音派の人々が指導的な立場にあったと指摘。福音派は奴隷制廃止の最前線にいたし、牧師たちがこの運動を指導した。女性の参政権を求める運動や、児童労働に対する抗議運動においても福音派の人々がその第一線にいたと語った。
ウォレン牧師は、20世紀には社会的福音の側にあった主流派と、道徳問題と救いについて強調した福音派や根本主義者の間に分裂があったとし、「私がしたことというのは、私が19世紀の福音主義と呼んだものを再び目覚めさせたことだ」と語った。
ウォレン牧師が牧会するサドルバック教会(カリフォルニア州)は礼拝参加者が2万2000人と米国4位の規模で、米国で最も影響力を持つ教会の一つ。エイズ問題や貧困問題などの社会問題に対するアプローチも積極的で、市民同士の交流と連帯促進などを目指して「市民フォーラム」を開催しており、今年は大統領戦を争ったオバマ、マケインの両氏が参加するなどした。