イラク北部の都市モスルで、24時間という短時間にキリスト教徒3人が連続して殺害される事件が発生した。同一犯によるものかどうかは不明。
イラクの通信社「イラクの声」によると、男性一人とその父親の合わせて2人が作業していた仕事場で銃殺され、一方別の場所にある薬局で身元不明の武装グループが押し入り、薬局で働いていたキリスト教徒1人を殺害した。同通信社は関係者の話として、武装グループは事件後逃走したとしているが、それ以外の詳しい情報は伝えていない。
モスルは、ニーナワー県の県都でイラクの首都バグダッドの北西約400キロに位置する都市。アッシリア人キリスト教徒の歴史的な中心地で、彼らからは先祖以来の故郷として見なされている。イラクではバグダッドに次いでキリスト教徒が多い都市となる。
イラクのキリスト教徒は人口の約3%と言われる少数派で、03年のイラク戦争によってイラク国内のキリスト教徒は避難を強いられ、現在は戦争前の半数にまで減少しているという。また、イラクに在住する多くのキリスト教徒は政治的、軍事的な権力を持たないため、殺害や強制移住などによって根絶されてしまうことも危惧されている。
キリスト教徒が比較的多いとされるバグダッドやモスルでは特に狙われることが多く、今年2月にはモスルで武装グループが警護ら3人を殺害して、カルデア典礼教会のパウロス・ファライ・ラホ大司教(65)を誘拐、その後殺害した。この事件をめぐっては、教皇ベネディクト16世が声明で、「(イラクで)少数派のキリスト教徒に対する暴力」だと非難。今年5月には、殺人に関与した罪で、国際テロ組織アルカイダの指導者で指名手配されていたアーメド・アリ・アーメド被告に対して死刑判決が言い渡された。