【CJC=東京】9月15日、リーマン・ブラザースの破綻を契機として、あっと言う間に金融恐慌が「世界の中心」ウォール街ではビジネスマン自身を襲うことになった。こうなると、最後の頼みが宗教になるのも無理からぬことか。
周辺の教会やユダヤ教会堂など、ウイークデーの正午礼拝への出席者が普段より多かったと言う。
ロイター通信によると、「何せ明日の運命も分からない人たちだ。驚くことではない」と観光客にも人気のトリニティ教会(聖公会)のマーク・ボズッティ=ジョーンズ牧師は言う。「金融恐慌は、私たちの信仰を富に変えることも出来なければ、富を信仰に変えられないことを思い起こさせた」と19日正午礼拝の説教で語った。
7年前の同時多発テロの後と違うのは、あの時、生き残った人たちは、進むべき道を確信出来たが、今回は何をどうして良いかすら分からないということだろう。
普段なら平日には観光客やビジネスマン数人の姿しか見えないところだが、破綻以後は訪問者が増えている、とボズッティ=ジョーンズ牧師。仕事を失った人々から助けを求められてもいる。「人々は、ただそこに座り、祈るか、泣くか、疲れていることは間違いない」と言う。
少し離れた所にあるセントピーター・カトリック教会では「スーツを身に付けた人々の出席が増えたようだ」とピーター・マディガン神父は言い、あの9月11日の瓦礫の中から発見された十字架を記者に見せた。
ユダヤ教会堂は、ウォール街の人々のために夜も扉を開けることにした。
ウォール街の苦難に教会、「ストレス対策」集会など開催
米国始め世界を襲った金融破綻。本拠とも言える「ウォール街」では、企業消滅に伴い、投資家は先行きを見通せず、経営者は相次ぎ高級マンションから退去しているが、一方で突如クビにされた従業員は、明日のこともわからず路頭に迷う始末。
「世界の他のどことも違って、ニューヨークで、私たちが吸う空気は、お金の分子で一杯」と、マンハッタンのミッドタウン地区にあるセントバーソロミュー教会(聖公会)のバディ・スターリングス牧師は9月21日の説教で述べた。その日の説教では、マタイによる福音書20章の最初にあるぶどう園で働く労働者の賃金をめぐる物語に触れたところが多かったと見られる。
米国の教会は、教会員の生活が不安になれば献金の減少が避けられず、投資の収益急減にも頭を痛める。その一方で、苦難にさらされている人たちへのケアは欠かせない。
ウォール街の名所ともされているトリニティ教会(聖公会)は、「ストレス対策」と言う集会を9月22日から始めた。場所柄もあってか、ストレス対策の柱として、転職を掲げている。
ハドソン川の対岸ニュージャージー州ショートヒルズのクライスト教会では、転職支援を21年間も行っているが、普段なら40人ほどの参加者のところ、9月20日には、10代を中心に出席が急増したという。