本紙元スタッフの中橋祐貴氏が最近、「ホンダ」という名前を使い韓国のメディアに登場した。一方、別の韓国メディアでは、同一と見られる人物が、本紙元スタッフではなく、「張在亨(ジャン・ジェヒョン)牧師教団」なるものの「脱退者」として出演した。中橋氏が一人二役を演じた可能性が高く、韓国現地では奇怪な報道として一つの騒動になっている。
韓国のニュースサイト「教会と信仰」は19日、本紙の元スタッフだという「ホンダ」という人物が、ソウル近郊の「光と塩教会」で18日に記者会見を開いたとし、張牧師の「再臨主疑惑」が日本で再熱していると伝えた。しかし、本紙にはこれまで「ホンダ」という人物が在籍していたことはない。本紙が韓国のクリスチャントゥデイ(本紙とは別法人、以下「韓国CT」)を通して「教会と信仰」に確認したところ、「ホンダ」と名乗る人物は中橋氏であることが分かった。中橋氏は、自ら「ホンダ」という名前を使うことや、顔を出さないことなどを「教会と信仰」に要求してきたという。韓国CTからの指摘後、「教会と信仰」は誤りを認め、「ホンダ(仮名)」と訂正した。
韓国CTの調べによると、中橋氏は通訳者を連れて光と塩教会を訪れた。同教会は「異端専門家」を自称しながらも、韓国プロテスタント教会の連合組織である韓国基督教総連合会(CCK)から、今も「異端」とされている崔三更(チェ・サンギョン)牧師が牧会する教会だ。崔牧師は、三位一体を否定する「三神論」や、「イエス・キリストはマリアの月経を通して生まれた」とする「月経胎孕(たいよう)論」などの自説を主張している人物で、「教会と信仰」は、崔牧師自身が編集者を務めるメディアでもある。
「教会と信仰」によると、「ホンダ」氏は、本紙を辞めた理由の一つとして、本紙に対して異端・カルト疑惑を提起した日本の救世軍少佐(牧師)Y氏との訴訟における資料を挙げた。「教会と信仰」は、その資料を見たという「ホンダ」氏の話として、日本の裁判所が、争点の一つとなったノートの持ち主である本紙の元スタッフK氏が張牧師を再臨主と信じていたと認めたと報道。その上で「つまり、日本の裁判所でも張牧師を再臨主だと信じたという人々の証言がそのまま受け入れられたということ」などと伝えた。
しかし実際には、そのような事実はない。張牧師の「再臨主疑惑」を主として主張したY氏に対して、東京地裁は2013年、「客観的な資料に基づいて慎重な分析が行われたとはいい難く、他に合理的な根拠といえる資料は認められない」として、賠償金95万円の支払いと、名誉棄損表現の削除を命じている。もちろん、本紙のスタッフが張牧師を再臨主と信じていたなどとも一切認めていない。
「ホンダ」氏はこの他、「張牧師グループ」の元信者らによるとされる「ビオラの会」が最近出した声明について、日本で唯一報じたキリスト新聞の記事を紹介したり、かつて張牧師の「再臨主疑惑」を韓国で提起したイ・ドンジュン氏と対談したりした。
「ビオラの会」は今年7月に結成されたと伝えられているが、その内容はすでに十数年前に提起された問題を焼き直ししたようなもので、「疑惑再熱」を願う一部の人々がけしかけたようにも見える。さらにメンバーは全員が匿名で、本紙に寄せられた情報によると、日本の別のキリスト教紙は声明を入手していたが、匿名で会の実態が分からず、掲載を見送ったという。他にも、一時掲載した後に削除した在日韓国キリスト教紙もある。 一方、イ・ドンジュン氏はかつて、張牧師の「再臨主疑惑」を主張したことがあったが、その証言が虚偽であったことが、CCKの調査で明らかになっている。
「教会と信仰」はこの他、韓国の3つの教団が張牧師に対して依然として「再臨主疑惑」を提起していると伝えている。しかし、いずれの教団もすでに、そうした決議の無効が総会で確認されたり、疑惑を提起した牧師が張牧師自身に謝罪したり、疑惑を否定する新しい決議が出されるなどし、事実とは異なっている。そもそも「再臨主」という言葉自体が、統一協会(現・世界平和統一家庭連合)で使用されている用語だという。あえて統一協会の用語を使って「疑惑」を提起することで「怪しい」と思わせる意図が透けて見える。
その後、韓国のキリスト教放送「CBS」は23日、同じキリスト新聞の記事を取り上げて報じた。しかし今度は、本紙元スタッフではなく、「張在亨牧師教団 日本脱退者」というテロップで紹介された人物が登場した。この人物は、名前は明かされず、顔もモザイクがかけられていたが、「教会と信仰」に登場した「ホンダ」氏と非常によく似たストライプのワイシャツを着て、日本語でインタビューに応じた。一体この人物は本当に「張在亨牧師教団」なるものから「脱退」した人物なのだろうか。この人物については現在、韓国CTがさらに詳しい調査を行っている。
本紙は、中橋氏と2016年3月〜2018年2月の約2年間、記事執筆や広告営業に関して業務委託契約を結んでいた。しかし今年に入って以降、日本基督教団で本紙に関する声明を主導したとされる牧師や、クリスチャン新聞編集顧問の根田祥一氏らと内通していたことが判明。他のスタッフにも働き掛けるなどし、今年2月に契約を終了した。契約終了後も、本紙の社会的評価を低下させる虚偽の内容を関係者に送付するなどしており、すでに本紙は弁護士を通して、警告の通知文を送っている。
通知文を受けての焦りから出た苦肉の策が、今回の騒動なのだろうか。中橋氏は現在、日本の一キリスト教メディアに籍を置いている。その彼が、他紙の記事を片手に名前も顔も隠して海外まで行き、一人二役を演じて騒ぎを起こしたのであろうか。もしそうだとしたら、その行為は一体、読者の目にどう映るだろうか。