全日本宣教祈祷運動(三森春生運営委員長)が主催する、第8回国のために祈る夕べが12日、東京千代田区のお茶の水クリスチャンセンターで行われた。「我々クリスチャンにとっての『愛国心』とは何か」と愛国心をテーマに、東京基督教大神学部長の小林高徳氏(日本長老教会柏シャローム教会牧師)が聖書からメッセージを伝えたほか、呉永錫氏(東京聖市化運動本部会長)や上中栄氏(日本ホーリネス教団鵠沼教会牧師)が証をした。約60人が参加し、「我々(クリスチャン)はまだ少数ではあるが、国のために祈ろう」と祈りのひと時を持った。
小林氏は、愛国心は権力者によって利用されれば危険なものであるが、それ自体を否定することはできないと指摘。それぞれが持つ祖国愛が紛争を引き起こすこともあり、また一方でグローバル化した現代では一国に対する愛国心を持ちづらい人々もいるなど、「古くて新しいデリケートな問題」であることを語った。
その上で小林氏は、ヨハネの福音書11章49〜52節、12章32〜33節を引用。当時の人々が持っていた愛国心は、「ローマ人がやって来て、われわれの土地も国民も奪い取ることになる」(11:48)に見られるような、自らの国だけを考える「偏狭な祖国愛」であったと指摘。一方でイエスの生涯は、「国民のために死のうとしておられる」(51)、「ただ国民のためだけでなく、散らされている神の子たちを一つに集めるためにも死のうとしておられる」(52)にあるように、「愛国心は否定されていないが、その偏狭さは超克されている」ものであったと述べ、愛国心を考えるときに、それが持つ偏狭さを乗り越える必要があると語った。
また、今日の多文化・多民族社会において異なる他者を理解し、共存することは、国旗や国歌を強制することでは達成できない。神と人類、諸国民の間の和解を、自らが死ぬことで実現したキリストに倣って、異なる他者とともに苦しみ、ともに痛みを担うことが必要だと語った。
この他集会では、韓国料理レストランを経営するクリスチャン実業家の呉氏と、日本福音同盟(JEA)社会委員会委員の上中氏が自らの経験とともに愛国心について語った。
今から24年前に韓国から来日した呉氏は、当時は信仰を持ったときに決めた教会への献金も躊躇するくらい貧しかったが、神にささげる思いでそれを守り、今は経済的にも祝福され聖市化運動にも携わっていると証する。その聖市化運動は「まずは自分を清くする」ことが第一にあると説明し、愛国心も同じく、まずは自分が国のために何かをささげていかなければできないものだと語った。
一方、所属する日本ホーリネス教団では福音による和解委員会委員長を務める上中氏は、愛国心が場合によっては権力者が大衆を動かすための「便利なツール」になりえると指摘。また、愛は自立的なもので法律で愛国心を求めることは間違いだとする声もあるが、聖書にも「あなたの神である主を愛せよ」(マタイ22:37)、「あなたの隣人をあなた自身のように愛せよ」(39)と愛することを命令している。教会の理論と世俗の理論が混同されやすく、置き換えられやすい面があり、注意する必要があると語った。
祈りの時間では、JEA理事長の中島秀一氏(日本イエス・キリスト教団荻窪栄光教会牧師)が、大正・昭和期のキリスト教社会運動家として著名な賀川豊彦が語った「日本に救いを、世界に平和を」を引用するなどして祈ったほか、参加者それぞれが数人のグループに分かれるなどして、国のために祈った。