オクダ商事(東京・福生市)が2007年より取り組んでいる「DESIGN PROJECT」は、注文住宅のようなデザイン性と機能美を兼ね備えた賃貸住宅。
「今や人口は右肩下がりで、不動産業界は借り手市場の時代です。私が生まれ育った福生市をはじめ、青梅市やあきる野市、羽村市など、近隣の市も年々人口が減少しており、空室率は20%と言われています。こうした時代背景を踏まえた上で、お客さまのさまざまなニーズに応えたい。そんな思いから『DESIGN PROJECT』はスタートしました」と同社代表取締役社長の奥田英男さん。
2017年現在、「個性的で、シンプル」をコンセプトに手掛けたオリジナリティー溢(あふ)れる住宅は01~07の7種類で、福生市や羽村市などを中心に、東京郊外に点在している。
例えば、まるで美術館のようにユニークな外観の「05」は、車好きの人にはぴったりの物件。ガレージに面したリビングには大きな窓が設けられ、愛車を眺めながらくつろぎのひとときを過ごすことができる。
一方で「07」は、音楽を愛する人のために作られたメゾネットタイプの物件だ。全居室とバスルームに高品質のスピーカーが設置されている他、洋室の一室には調音パネルも完備。自宅で演奏や作曲活動を楽しむことができる。
この他にも、昔ながらの通り土間のある家を再現した「01」、賃貸でありながらバルコニーやウッドデッキがあり、家庭菜園も楽しめる「06」など、同プロジェクトの物件には、「こんな家があったらいいな」という夢が詰まっている。
奥田さんは自社を「感動提供産業」と語る。
「この『DESIGN PROJECT』は、おそらく万人受けはしないでしょう。しかし、一般的な賃貸物件なら、すでにたくさん存在します。家は毎日過ごす場所ですから、たとえ賃貸であっても大切に選びたい、こだわりたいという方が多くいらっしゃいます。そうした方たちのニーズを満たし、この家に住みたいと思っていただける家造りを目指しています。もちろん、デザイン性だけでなく、暮らしやすさも重要。安全性や耐久性、メンテナンス性にも優れていなければ『いい家』とは言えません。
1つのプロジェクトが動き出すまでには、デザイナーをはじめ、携わるメンバーと徹底的にミーティングを繰り返し、住む人にとって本当に価値のある家とは何かを追求していきます。私たちも造っていて楽しいんですよ。造り手も、住む人もワクワクする。それが『DESIGN PROJECT』の最大の特徴です」
立地や交通の便よりも、精神的に豊かな暮らしを求める人も増えている現代。都心部からも「この家に住みたい」という理由で移住してくる人も多く、同プロジェクトは全戸客付率95%以上を誇る。
同社のクレド(企業理念)にはグループ・ミッションとして以下のことが掲げられている。
「不動産及び建設の創出物について、常識にとらわれず、革新を求め、品質性・機能性・意匠性に富み、時代に即した商品と最高のサービスを提供していき、自身及びクライアントに感動を与えるとともに、住宅環境を活性化させ、豊かな生活の場を創造していく存在となる」
奥田社長は語る。
「日本はスクラップ&ビルドを繰り返しているため、時代とともに街の景色がめまぐるしく変化しています。一方、ヨーロッパなどでは数百年前に建てられた建築物が観光名所になるなど、今も愛され続けている。本来、建築物とは街を象徴する存在であり、その街の歴史を作るものでもあります。私たちも同様に、何百年という時間を経ても愛される家を造りたい、住む人や街に喜ばれる家造りをしていきたいと願っています」