中央アフリカ共和国で激しい暴動が続いており、教会建設が理由とみられる牧師の殺害を含め、複数の犠牲者が出ているという。
8人の子どもを持つバプテスト教会のアンゲ・アポレオン・ヌガコラダ牧師(36)も犠牲者の1人となった。キリスト教迫害監視団体「ワールド・ウォッチ・モニター」(WWM、英語)によると、ヌガコラダ氏は教会建設がもとで地元のイスラム教徒と口論となった。
中央アフリカ福音バプテスト連合のシンガ・グバディア会長は、ヌガコラダ氏が標的にされたのは地元のイスラム教徒らが教会建設に反対したためだと言う。「イスラム教徒たちは、アリンダオ(中央アフリカ南部の町)の情勢不安に乗じて、彼を自宅で殺したのです」
アリンダオは紛争で荒廃し、町に住んでいた2万5千人が全国に避難しており、残るのは8500人のみとなっている。先ごろ発生した暴動では、少なくとも37人が死亡した。犠牲者の中には、平和活動家であり、中央アフリカ福音同盟会長のニコラス・グエレコヤメ・グバンゴウ牧師の弟とおいもいた。
中央アフリカでは、イスラム過激派が中心の複数の反政府組織が「セレカ」と呼ばれる連合を結成し、2012年12月に国内の広域を掌握。13年3月には当時のフランソワ・ボジゼ大統領政権を打倒した。その報復として、反政府組織と戦う「反バラカ」(バラカは長刀のなたを意味する)と呼ばれる武装集団が結成された。キリスト教徒を中心に構成される民兵組織で、報復としてイスラム教徒が中心のセレカに攻撃を開始し、これまでに数千人が殺害されている。
13年後半には、旧宗主国のフランスやアフリカ連合が治安維持を目的に軍事介入をし、14年2月に首都バンギの市長であったカトリーヌ・サンバ・パンザ氏が、同国初の女性元首として暫定大統領に就任。16年4月からは、フォースタン・アルシャンジュ・トゥアデラ元首相が大統領を務めている。
アフリカ福音同盟の総主事であるアイア・フォディー・カベンジェ牧師(シエラレオネ)は、「宗教指導者たちが標的とされ、攻撃によって命を奪われたという知らせを聞き、悲しみで衝撃を受けています。彼らが示した勇気は、中央アフリカの国民に希望をもたらしました」と述べた。
「遺族の上に神の恵みと慰めがあるようお祈りください。小国の少数派が悪に傾倒し、国連によって表明される世界平和の意志を無視し続けることを私は理解できません。国連は正義の勢力として、世界中で勝利しているかのように見える邪悪な勢力に立ち向かう必要があります」
中央アフリカは、アフリカ中央部に位置する内陸国で、面積は日本の約1・7倍の大きさ。人口は約480万人(2014年)。1960年にフランスから独立するが、その後不安定な情勢が続いている。宗教は、土着宗教が35パーセント、プロテスタントが25パーセント、カトリックが25パーセント、イスラム教が15パーセントとされている。キリスト教が多数派となっているものの、アニミズムの影響も大きいという。