『どんなことにもくよくよするな!』(イーグレープ出版)の著者、佐々木満男弁護士のコラムを連載します。ラジオ大阪で現在放送中の人気番組「ささきみつおのドント・ウォリー!」(放送時間:毎週土曜日朝11:45〜、インターネットhttp://vip-hour.jpで24時間無料配信中)でこれまでに放送された内容を振り返ります。「ミスター・ドント・ウォリー」こと佐々木弁護士が、ユニークな視点から人生のさまざまな問題解決のヒントを語ります。(Amazon:どんなことにもくよくよするな!)
あなたは朝型ですか、それとも夜型ですか。私は夜型です。低血圧のせいか、子どもの頃から寝起きが悪く、朝の気分はいつもよくありません。お昼に向けて気分は上昇してくるのですが、お昼を食べると眠くなって、またダウンです。ところが夕方頃から元気になってきて、夜の10時11時頃にピークが来たりします。
たまに朝早く会議があったりして、無理にペースを上げると、自分のリズムがくずれて一日ボーっとして頭が働きません。一日のトータルで見ると、仕事量はかなりのマイナスです。
でも、朝型の人は違いますね。早朝から急ピッチで働きます。お昼が過ぎてもグングンとペースを上げていきます。どころが、朝型の人は夜になるとからきし駄目です。借りてきた猫のように急におとなしくなってしまいます。会合で9時を過ぎると、早く家に帰って休みたくなってそわそわしてきます。こういうタイプは血圧の高い人に多いようです。
ある人は、うさぎのように一気に物事を推し進めます。ある人は、かめのようにノロノロと、しかし確実に物事を達成していきます。人それぞれに、「自分のペース」があるのですね。
人のペースがそれぞれ違うとことから、さまざまな問題が生じます。例えば、早起き型の人にとっては、朝寝坊型の人とはペースが合いません。お互いに自分のペースを押し付けるとトラブルになります。うさぎタイプの人とかめタイプの人もペースが合いません。これも、お互いに自分のペースを押し付けると問題ですね。
相手のペースに合わせると自分が破綻し、自分のペースを押し付けると相手が破綻してしまいます。夫婦の問題やビジネスのトラブルの原因の多くは、各自のペースが異なるのに、それを無理に押し付けたり、無理に合わせようとすることにあります。
それでは、相手のペースを尊重しつつ、自分のペースを守って仲良くしていくにはどうしたらよいのでしょうか。あなたにできることは、「相手のペースを尊重し、自分のペースを相手に押し付けない」ことです。そうしてうまくやっていけるような人と組むことです。あなたのペースを尊重せず、自分のペースを押し付けてくるような相手とは、初めから何かを一緒にやらないことです。なぜなら、そのような関係は長くは続かず、途中で破綻してしまうからです。いわゆる、「うまが合う」とか「相性がいい」人と組むことですね。
朝寝坊でかめのようなノロノロ型の私ですが、その私と一番よく一緒に仕事をする人は、早起きでうさぎのように一気に物事を推し進めていくタイプの弁護士です。彼は非常に優秀ですが、せっかちで気が強く、相手の感情を無視してまでも仕事を推し進めるので、相手方と衝突することが多いのです。そのまま行けば、喧嘩別れか、へたをすると裁判沙汰になってしまいます。そんな頃合いを見計らって、私がのこのこ出て行き、「まあ、まあ、喧嘩しないで、仲良くやりましょうよ」と言って、よりを戻してあげるのです。
彼は自分のペースでバリバリ仕事をやり、私は自分のペースでノンビリ彼の仕事ぶりを見守りながら、必要に応じて調整役をする。そうするとうまく行くのです。彼とは、いろいろな仕事を20年以上も仲良くやってきました。
彼が同じバリバリ型の弁護士と組んだらどうでしょうか。すぐに意見が対立して分かれてしまいます。私が同じノロノロ型の弁護士と組んだらどうでしょうか。ますます仕事がスローになって、これもうまく行きません。
不思議なものですね。違うペースの者同士が組んだ方が、仕事がうまく行くことが多い。神さまは、それぞれの人の個性を違うようにうまく造っているのです。男と女の組み合わせもそうです。違う個性、違うペースを持っている者同士が組み合わさってうまく行く。
大切なことは、お互いに「相手のペースを尊重し、自分のペースを守る」ことなのです。あなたが今、人との関係に悩んでいるなら、「私は相手のペースを無視して自分のペースを押し付けていないだろうか」「私は自分のペースを犠牲にしてまで相手のペースに合わせすぎていないだろうか」と考えてみてください。きっとよい解決が見つかると思いますよ。
佐々木満男(ささき・みつお):国際弁護士。宇宙開発、M&A、特許紛争、独禁法事件などなどさまざまな国際的ビジネスにかかわる法律問題に取り組む。また、顧問会社・顧問団体の役員を兼任する。東京大学法学部卒、モナシュ大学法科大学院卒、法学修士(LL.M)。