イラク北部の都市モスルで先月29日、警護ら3人が殺害され、カルデア典礼教会のパウロス・ファライ・ラホ大司教(65)が武装グループに拉致された事件で、バチカン(ローマ教皇庁)は13日、大司教が遺体で発見されたと発表した。
イタリア司教会議の報道機関「SIR」は、バグダッドのシュェモン・ワーダニ司教が、「ラホ大司教は死んでいる。我々は彼の遺体をモスル近くで発見した。誘拐犯らは遺体を埋めていた」と語ったと伝えている。
CNNなどによると、武装グループは12日、地元司教区に電話で「大司教は死亡した」と連絡し、13日朝には遺体の場所を伝えてきたという。死因は不明で、埋められた遺体は死後約1週間が経過していたという。
米情報誌「U.S. FrontLine」(電子版)は、教皇ベネディクト16世が声明で、大司教が遺体で発見されたことについて「(イラクで)少数派のキリスト教団体に対する暴力」だと非難したと伝えた。
事件は先月29日夕方5時半ごろ発生。当日は受難節の金曜日ということもあり、ラホ大司教は信徒らと共にキリストの受難についての祈りを捧げた後、自宅に帰宅するところであった。
イラクのキリスト教徒は人口の約3%とされている。03年の米国による攻撃によってイラク国外への避難を強いられ、現在は攻撃前の半数にまで減少しているという。また、イラクに在住するキリスト教徒は国内で政治的、軍事的な権力がないため、殺害や強制移住などによって根絶してしまうのではないかとも危惧されている。