昨年6月に国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産暫定一覧に登録された「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」の本登録後、同遺産の観光などでどれほど経済波及効果があるのか。ながさき地域政策研究所(シンクながさき)は、同遺産の構成資産がある県内5市2町で本登録後、年間の客数が計51万人増、経済波及効果額が93億円に上るという試算を発表した。長崎新聞が9日伝えた。
試算によると、登録後5年間の観光客数の平均増加率は、五島市、小値賀町、新上五島町で各6%、平戸市、南島原市で各5 .6%、長崎市で3.4%、佐世保市で1.2%。国内の世界遺産登録地域で観光地としての知名度、規模、構成資産の配置状況などが同県の5市2町と比較的類似した地域を選出。その地域の登録後5年間の観光客数の平均変動率を同県の5市2町の観光客数と、一日当たりの観光消費額に反映させ試算した。
同研究所の小川昭博専任研究員は同紙に対して、「教会めぐりツアーなど回遊性の高い仕掛けをつくれば、5市2町に限らず県全体の活性化も図れる」と、遺産によるさらなる可能性を述べ、一方で今後の課題として、交通網の整備、ガイドの育成、観光と信仰の調和、外国人の誘客などを挙げた。
長崎県では教会群を含め、同県の歴史文化を広くアピールすることを目的に、2012年に大型イベントを開催することを決めている。一方、長崎市は4日、教会群の本登録に向けて「市世界遺産登録推進本部」(本部長:田上市長)を設置し、県、市町村の各レベルで教会群の世界遺産登録に向けての動きが活発化している。