北海道南西部に位置する室蘭市に、幕末の隠れキリシタンが逃れて来たことを示す、パリ外国宣教会の宣教報告書がこのほど発見された。同市中島町在住で、約10前から「日本切支丹迫害・殉教史年表」の作成に取り組んでいるクリスチャンの野中勝年さん(68)が資料を確認し、知人であるフランス人神父が翻訳を行ったという。地元の室蘭民報が13日伝えた。
同紙によれば、同市に逃れて来たのは長崎県のキリシタン、西友吉(当時27歳)のほか3家族。フランス軍艦に乗って函館港まで逃れ、同乗していた日本人伝道師・アウグスチノ高によって、1856年(安政3年)8月に同市の絵鞆まで連れて来られた。その後も同所に滞在し続け、58歳の時にパリ外国宣教会のベルリオーズ師と対面する機会を得、正式な典礼などの方法を託された。ベルリオーズ師は現在のカトリック室蘭教会の基盤を築いた人物。
一方、カトリック室蘭教会の最初の受洗者として、1893年(明治26年)1月29日に洗礼を受けたと記録されているマリア西ツタナシが友吉の妻でアイヌ民族であったこと、さらにヨハネ・バプチスタ西又吉とパウロ西友太郎が友吉の子どもであったこともわかったという。
中野さんは、今後もさらに裏付け進める考えで、同紙に対して「室蘭の歴史の新たな1ページになるのでは」と期待を語っている。
日本では1613年の禁教令以来、約260年に渡りキリスト教が公に禁止され、当時のキリスト者は「隠れキリシタン」として潜伏した。しかし、幕末の開国後、1864年に長崎の大浦天主堂を大浦在住の信者が尋ねてきたことなどから、その存在が認識されるようになり、諸外国からの非難によって政府がキリスト教を解禁する1873年まで、「浦上四番崩れ」など、信者を拷問にかけ、投獄し、全国に配流するという大規模な迫害があった。