「私とは何者か?-the IDENTITY-」をテーマに、第5回聖書聖会が7日から9日まで、グレース大聖堂(大阪府八尾市)で開催された。キリスト教北韓(北朝鮮)宣教会理事長で、山亭峴(サンヒョンジョン)教会の金寛善(キム・クァンソン)牧師を講師に迎え、最終日の9日は、「私から私たちへ」と題し、マタイによる福音書1章23節からメッセージが語られた。
金牧師はメッセージの冒頭、例話として、トイレが母屋から離れて作られることが多いという韓国文化を紹介し、子どものころ、母屋から離れたトイレに夜一人で行くのが怖かったという自身の思い出話を語った。3人の兄たちが誰も一緒に付いて来てくれなかったため、妹を連れて行ったと話して会衆の笑いを誘い、「力のない人でも一緒にいてくれれば心強い。まして、神様が共にいてくれるということはどれほど心強いか」と語った。
そこから金牧師は、「インマヌエル」とは、「神が私たちと共におられる」という意味であると話し、特に「私たち」という部分を強調。「私と誰かかがいるときに、『私たち』が構成され、その中に神様がおられるのです」と話した。にこやかに語る金牧師の言葉に熱のこもった通訳が続き、まるで一人の説教者が語っているかのごとく、聴衆の耳に自然とメッセージが届いた。
人は自分が祝福を受けたいと思い、「私が祝福を受けてこその祝福だろう」と考えて信仰生活を送ることがあるが、それは利己的な信仰心である。しかし、神は「私たち」を祝福したいと思っておられると話す金牧師は、韓国の教会の問題を指摘しながら語った。
金牧師によると、現在韓国では、自立できない教会が70%近くもあるという。巨大なメガチャーチに対し、小さな教会はあまりにも小さく、このような教会では、牧師は日々の糧も得られないような貧しい生活を送っている。こうした問題は、メガチャーチが小さな教会に配慮しないということから起こっていると、金牧師は指摘する。
20年前、山亭峴教会に赴任したばかりのころ、一本の電話を受けた。それは、60歳ぐらいのある牧師からの電話だった。その牧師はこう話した。「先生の教会の近くで、小さな小さな教会を運営しております。10名に満たない信徒しかいなかったのですが、山亭峴教会が引っ越してきたので、教会が成り立たなくなってしまいました」。そして、その教会は他の場所へ移っていった。
やがて金牧師の教会で、礼拝堂をもっと大きく作るべきではないか、という意見が出された。その時、金牧師はこう答えたという。「礼拝堂はもうこれでいいではありませんか。この礼拝堂で満足しましょう。私たちの教会に入れないなら、外の小さな教会に行ったらどうですかと、言えばいいのではないでしょうか。集め集めて、全ての信徒を自分のところに引き寄せてしまったら、他の小さな教会はどうなるのでしょうか」
そうして、小さな教会を助け始めた。とりわけ農村や漁村にある小さな貧しい教会を支援したという。ある牧師からは「このようなもてなしを受けたことは、今まで一度もありません」という言葉を掛けられたという。その時、金牧師は、山亭峴教会とその小さな教会が、「私たち」を構成したのだと気が付いたという。「そして、主がそこにおられるということにも。天の御国はそのように構成されていく。犠牲を払うこと。分かち与えていくこと。そこに、主は喜んで住まわってくださる」と語った。
そして、金牧師は次のように語って、メッセージを締めくくった。「宣教師は宝のようなものです。その宝を日本のこの地へ送らせていただいた。イエス様はこういうふうにおっしゃいました。『宝のあるところにあなたの心がある』と。彼のいるところに私の心もある。だから、日本の宣教のために祈り、そして皆さんのためにも祈ります。福音の実が豊かに、豊かに結ばれることを祈っています」
3日間の日程全てに参加したという奈良県在住の50代の女性は、「韓国の方が日本のことを思ってくださっているのがよく分かりました。日本と韓国は今、対立し合っていて、あまり韓国は好きではなかったのですけども、金寛善先生のお人柄にすごく惹かれましたし、韓国の方の愛がすごく分かって、わだかまりが溶けました」と感動していた。
また、グレース宣教会代表牧師である堀内顕牧師は、「長い間、祈りを重ね、主に求めてきたことが、実現した集会だった。参加者の心が引き上げられて、主を真剣に求めて生きるような、そういう集会になったと思う。講解説教の大きな力を見させてもらった。まれに見る素晴しい聖会だった」と喜びを語った。
事務局では、メッセージCDを1セット(4枚組)2000円で用意している。
また、グレース大聖堂では、11月24日(月・祝)には第23回メサイアコンサートが開催される。午後3時開演。チケットは前売り2000円、当日2200円。問い合わせは、グレース大聖堂(072・997・4838)まで。