私の仕事は人に会うことだといっても言い過ぎではありません。半面、「段取り八分の仕事二分」と言われますが、実際に仕事をしている時間の4倍は段取りをします。
1997年に所属教会の伝道師になり、2001年に新宿福興教会の牧師になりました。
伝道師は牧師の卵です。責任が大きくないので、毎日人と会っては伝道をし、神学の勉強ばかりしていました。
牧師の按手を受け、新しい教会に任命を受けてからは、いきなり自分が責任者になりました。会社であれば社長です。経験の乏しい私には、すべてが新鮮で、かつ、すべてが重荷でした。
当時、一番力を入れていたのは、日曜日の礼拝で語る説教です。神学校では、「説教準備には20時間はかけなさい!」と教えられましたので、忠実にそれを守り、多くの時間を説教準備に割きました。
伝道したり、神学の勉強をする時間が極端に減ってしまいました。
説教準備の20時間は、聖書の本文を何度も読み、そこから、説教題や緒論、本論、結論を決め、さらに、解説書を読んだり、原文にも目を通しました。下準備が終わったら、一気に完全原稿を書き上げました。10ページくらいになりました。ここで、こんなジェスチャーで、こんなジョークを入れて、笑いを取る、みたいなことも書きました。
この完全原稿を書くという作業は、自分を知り、長所を生かし、短所を克服するために行いました。
人によっては、話の筋さえ決まっていれば何時間でも話ができるかも知れません。しかし、私は、原稿を目の前に置き、それを朗読する形でなければ、途中で言葉が詰まってしまったり、話が筋から逸れてしまったりして、ちゃんと説教ができませんでした。それが私の弱さでした。
しかし、不思議ですね、「継続は力なり」。今では、簡単なアウトラインさえあれば、言葉と言葉をつなげて、聴衆の反応を見ながら自由に説教ができるようになりました。
今は、説教準備より、祈り備えることを大切にしています。祈ることで、神と親しく交わるので、私の言葉や存在を通して、神の臨在が会衆に伝わります。また、神によって与えられる、愛、喜び、平安、希望、力、聖霊の油注ぎなどが、説教を通して聴衆に流れますので、語る言葉に力と権威が与えられ、聴く人の人生が変えられていきます。
以前記事にした、ビル・ウィルソン牧師は、いつでも説教する準備ができている人だと感じました。通常、開演前の、音楽のサウンドチェックやリハーサルをしている時間にステージや客席、まして、受付の辺りをうろうろする講師はあまりいないと思います。
むしろ、楽屋にこもって、タイムスケジュールの確認をしたり、会の進行の打ち合わせをしたり、講演のために静かに心を整えるための時間を過ごします。人を避けて楽屋で過ごすのは、マイナスの影響を避け、本番で最高の講演をするために、心を整えるためです。
しかし、ビル・ウィルソン師は、スラム街の子どもたちを相手にする牧師です。いつでも、どこでも、誰にでも、話ができなければいけません。「5分待ってね。お話の準備をし、お祈りするから」、何ていうことは許されません。子どもたちは、どこかにいってしまうでしょう。待ったなしで、今、目の前にいる子どもに、愛を込めて神の言葉を語らなければなりません。
私たちは、それぞれ違った性格、特質、能力が与えられています。自分の長所と短所をよく知り、長所を生かし、短所を克服できるように工夫したら、自分を最高に生かすことができます。
ある男性は、これといった取り柄もなく、才能もないので、違う方面の長所を伸ばそうと考えました。人と待ち合わせをしたら、人より早くその場所にいくことを心がけ、誰よりも早く会社に出社し、一番最後に退社し、人がしたくない仕事を進んで引き受け、休日にも会社に来て、会社の周りを掃除したり、磨いたりしていました。
その直向きな姿は、人々のうわさ話となり、たまたま通りがかった社長が目にすることもありました。その姿は、自分の評価を上げるためのパフォーマンスではなく、会社のために一生懸命尽くしていました。今その人は、その会社の社長です。
別のある男性は、短所ばかりが目立つので、いつも人から好かれず、のけ者にされました。そして、「どうせ俺なんて!?」と心でつぶやき、嘆いているだけです。
しかし、悩むことにエネルギーを浪費するのではなく、短所を少しでも削る努力をし、その短所が目立たなくなるくらい長所を大きく伸ばしたらいいのです。人より先にあいさつをするとか、困った人を見たら手を差し伸べるとか、いつも笑顔でいるとか、心がけ次第で長所はいくらでも開発し、伸ばすことができます。自分を知り、長所を生かし、短所を克服することで、人生はいくらでも切り開いていくことができます。
あなたはすばらしい人です。無限の可能性を持った人です。
「私は、私を強くしてくださる方によって、どんなことでもできるのです」(ピリピ人への手紙4章13節)
あなたの祝福と成功を祈ります。
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菅野直基(かんの・なおき)
1971年東京都生まれ。新宿福興教会牧師。子ども公園伝道、路傍伝道、ホームレス救済伝道、買売春レスキュー・ミッション等、地域に根ざした宣教活動や、海外や国内での巡回伝道、各種聖会での讃美リードや奏楽、日本の津々浦々での冠婚葬祭の司式等、幅広く奉仕している。日本民族総福音化運動協議会理事。
■外部リンク:
新宿福興教会ホームページ
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