米ニューヨーク市の牧師たちは、最近の裁判所の判決でも、教会が公立学校を礼拝に使用することを禁止する政策が守られたものの、将来的にはこの政策が覆されることになるだろうと楽観的だ。
ニューヨーク市礼拝の権利委員会の共同委員長であるウィリアム・デブリン牧師は16日、米クリスチャンポスト紙に対し、市長自身は彼らの味方であると語った。
「ニューヨーク市中の牧師たちが、礼拝する権利についての最近の展開にとても楽観的になっています。デブラジオ市長は100パーセント我々の味方ですし、いつかそのうち彼が教育委員会のこの差別的なひどい政策を覆してくれることになるでしょう。彼がそう約束しています」とデブリン牧師。
4月初旬、ブロンクス・ハウスホールド・オブ・フェイス教会が放課後の時間に公立学校を礼拝に使用することについて、長く続いた法的争いは、ニューヨーク市裁判所の判決により、教育委員会側の勝利に終わった。ブロンクス教会が提出した、日曜の礼拝に公立学校の建物を使用したいという申し込みが最初に却下されたのは、1995年のことだ。
しかし、判決後、デブラジオ市長が公立学校の建物での礼拝が許可されるようにすると宣言。これによって、市の決定はアメリカ憲法に違反するとした2012年の下級裁判所の決定以来、公立学校の建物を礼拝に使用していた約30の教会が安堵した。今回彼らは立ち退かなければならない事態に直面していたからだ。
「宗教的団体も他の皆と同じように公立学校のスペースを使う権利があると思います」とデブラジオ市長は4月に話したと、米ウォールストリート・ジャーナル紙は伝えた。「裁判所の判決の結果として、我々の政策を変更することになるでしょう」
政教分離の原則を盾に、公立学校の建物で放課後礼拝を行うことを禁止する教育委員会の政策には、宗教的団体の多くが反対している。今週早々、14の宗教的団体が第2巡回控訴裁判所に、自分達の権利を守って欲しいと弁論趣意書を提出した。
この書類を準備したのは、クロウウェル&モリング法律事務所のフレデリック・W・クレイブルック・ジュニア氏とトーマス・P・ギース氏だが、教育委員会の政策は「ニューヨーク市の宗教心ある市民とコミュニティに敵対的なメッセージをつきつけるもの」であり、アメリカの国教条項に違反すると主張している。
この弁論趣意書に署名したのは、クリスチャン・リーガル・ソサイエティの他、ニューヨーク市教会協議会、アメリカ正統派ユダヤ教信徒協会連合、ブルックリン教会協議会、クイーンズ教会連盟、ニューヨーク都市圏アメリカバプテスト教会、アメリカチャーチ・オブ・クライスト全米協議会、セブンスデー・アドベンチスト教会総会、全米福音派協会、南部バプテスト連盟の倫理および宗教の自由委員会、アメリカ聖書協会、北米聖公会、インターフェイス・アセンブリー・オン・ホームレスネス・アンド・ハウジング、アメリカ改革ニューヨーク会議、アメリカ改革派教会ニューヨーク支部だ。
またこれら宗教的グループは、全米のほとんどの学校が、週末や夕方空になる自分たちの施設を教会が使ってくれることを歓迎していると指摘した。
ブロンクス・ハウスホールド・オブ・フェイス教会の弁護を行った弁護士グループ「アライアンス・デフェンディング・フリーダム(ADF)」も、控訴裁判所は法律を誤って解釈していると主張した。
「アメリカ憲法の『言論の自由』条項に従えば、ニューヨーク市は、空になっている学校の建物内での礼拝を禁止することはできないのです」と、ADFの上級弁護士、ジョーダン・ローレンス氏は4月の判決に対して書面で反論した。
「その理由はつまり、公立学校の建物は一般に、『コミュニティの福利に関係する』活動のため、全ての個人とグループに開放されているからです。ニューヨーク市には教会のための助成金はありません。 教会も他の宗教的団体も、公立学校を使うため、皆他と同じ料金を払っています」
ADFは以前にも最高裁に上訴したことがあるが、これは2011年に却下された。
ニューヨーク市ワシントンハイツのマンハッタン・バイブル教会を率いるデブリン牧師は、公立学校での礼拝禁止に抗議するため、1ヶ月以上特別に祈りの会を行い、断食をしたという。教会が学校の建物で礼拝をできるようにするのは、関係者皆にとって有益だと彼は話す。
「我々は学校の子供達に無料で教えています」とデブリン牧師は、2012年6月にクリスチャンポスト紙のインタビューで次のように語っている。
「学校の関係者はそれをコミュニティに対する奉仕として見ています。教室の壁のペンキを塗り、エアコンを購入し、本や、教材、ノート、ペン、クレヨン、鉛筆なども買っています。ニューヨーク市公立学校の校長から、教会に出て行って欲しいという文句を聞いたことなど一度もありません」
デブリン牧師は付け加える。「校長先生たちは、社会のコミュニティと学校とが繋がっていて欲しいと言います。ブロンクスに住んでいる人達の多くは、片親だけの家族で、貧しく、公営住宅に住んでいて、子ども達にはカバンやノートやペンや鉛筆を買うお金もあげられません。そんなところに、宗教的グループ――それが仏教だろうと、ユダヤ教だろうと、イスラム教だろうと、キリスト教だろうと――がやって来て、そういったものを提供してくれるんです。歓迎しないわけがあるでしょうか?」