東京地裁から、名誉棄損による賠償金の支払いを命じられていた救世軍の山谷真少佐(牧師)は、賠償命令に加えて名誉棄損表現にあたる記述の削除を命じた今回の判決を受け入れ、控訴を断念した。これにより、山谷氏の敗訴が確定した。
山谷氏は裁判所の命令に従い、クリスチャントゥデイ側に賠償金95万円と遅延損害金の合計121万5348円を支払った。一方、クリスチャントゥデイは、山谷氏から受け取った賠償金と遅延損害金の全額を、11月29日付で救世軍の社会鍋に寄付している。
今回の判決により、クリスチャントゥデイを異端・カルト団体と指摘し、従業員がマインドコントロールを受けているなどと主張してきた山谷氏の数々の記述は、「合理的な根拠があるとはいえない」「裏付ける証拠はない」「意見ないし論評としての域を逸脱したものとして違法性が認められる」などと、明らかな名誉棄損行為と認められた。同氏がブログ上でクリスチャントゥデイに対する名誉棄損行為を始めてから約8年を経てようやく、山谷氏敗訴のかたちで事件の決着がついた。
クリスチャントゥデイ側が山谷氏の名誉棄損行為によって受けた被害について、判決で戸田久裁判長は「キリスト教に関する情報提供を目的とする団体にとって、カルト団体である旨の評価がされることは、その活動の信憑性を著しく損なうおそれがある」「原告ら(クリスチャントゥデイおよびその従業員)が被った不利益の程度は小さいものとはいえない」と、その深刻さを指摘した。
また、名誉棄損表現にあたるブログの記述については、「不特定多数人が閲覧することが可能なインターネットで放置すれば、原告らに将来的にも損害が生ずるものと認めるのが相当であるから、現に行われている侵害行為を排除し、又は将来生ずべき侵害を予防するために、名誉毀損成立部分である本件各名誉毀損表現について削除請求を認めるものとする」とし、削除を命じた。
一方、クリスチャントゥデイが山谷氏に対して求めた謝罪文の掲載については、「本判決によって被告による名誉毀損が認定され(中略)損害賠償が支払われることによって、原告らの社会的評価や精神的苦痛は相当程度回復されると考えられること」「原告会社は世界的なネットワークを有するマスメディアであり、自ら名誉回復処置を取ることが可能であること」などを考慮して、山谷氏が謝罪文を掲載するまでの必要はないとする立場を示した。