日本クリスチャンアカデミー関西セミナーハウス活動センターが主催する講演会「はなしあい・生命の意味を問う」(全4回)の第2回目が28日に開催された。「新生児の看取りの医療・いのちを慈しむ医療を求めて」と題して、船戸正久氏(淀川キリスト教病院医務部長、周産期母子センター長、小児科部長)が、新生児医療の現場から見た治療の現状について講演し、看取り医療の重要さを伝えた。
これまで、極小未熟児(出生体重1500グラム未満)は、未熟児特有の病気を起こしやすく、さまざまな合併症が起こる確率が高いことから、生存が困難であった。しかし、治療医学の発展が著しい現代、出生体重1000グラム以下の超未熟児であっても、8割以上が救命されるという。
船戸氏はそうした医療の進歩によって、従来は生存できないとされた子どもの命を救えるようになったが、それに伴い、「もう治療の施しようがない」という段階で、看取り医療へ移行する判断とその時期の見極めが、非常に重要になってくると伝えた。
新しい命の死を迎える現場で、当事者たちの治療に対する思いは複雑だ。医師と家族との十分な話し合いがあっても、裁判になることがある。参加者たちは、そこに医療従事者の葛藤があることを真剣に受け止めていた。
参加者からは、「新生児は自分から何を望むか伝えられない、医療スタッフと家族側とのミュニケーション、その話し合いが十分にされることが必要と知った」「とても難しいけれども、答えが出にくい現場で、最善なことが何かを考える現場の方たちの苦労を知りました。この現実を他者へと伝えていくことが大切だと思います」などの感想が聞かれた。
次回は8月10日から、1泊2日の宿泊プログラムを行う。臨床精神医学を専門にする工藤信夫氏(平安女学院 人間社会学部 福祉臨床科教授)が講演を予定している。
詳しくは、日本クリスチャンアカデミー関西セミナーハウス活動センター(電話:075・711・2115、 ファックス:075・701・5256 、メール:[email protected])まで。