シュルツ氏はスターバックスの年次総会で、同社が「多様性を包容する論理の上に成り立っている」と述べ、同性婚支持を表明した。
米国の企業が同性婚支持を表明することはめずらしい。より多くの利害関係者の支持を得るべく、同性婚については慎重な姿勢を取るのが一般的だ。しかしシュルツ氏は、「もしこの見解を不快に感じられるのでしたら、株式を売却してこの会社から離れてください。誰もあなたを引き止めはしないでしょう」と強気の姿勢を見せた。
同性婚支持を表明したことでスターバックスは、米国のキリスト教界をはじめ、伝統的な結婚の在り方を支持する団体や個人から多くの非難を受けている。一部の保守派キリスト教徒は、スターバックスが今回の見解について正式に謝罪するまでは、同社の商品を一滴も飲まず、触れることもしないと誓っている。
スターバックスは米国中に店舗を展開し、米国内での影響力は大きい。福音主義の立場を取るキリスト者の間でも、不買運動に対する見解は必ずしも一致していない。「南部バプテスト倫理と宗教解放委員会」会長のラッセル・ムーア氏は、不買運動への盲目的な参加に異議を唱えている。ムーア氏は、「不買運動自体が間違っているわけではないが、不買運動は聖書の教えに近いものではない。不買運動によって、結婚に対する価値観の違いが産業界やその他の勢力を巻き込んだ対立を増長させることにならないか心配している」と話す。
一方で、キリスト教界が同性婚についてあいまいな立場を取ることによって、米国内の主流教会の在り方がキリスト教の伝統的な原理原則から乖離してしまうのではないかという懸念も高まっている。前回の大統領選でも、「キリスト者だと言いながら同性婚や中絶を支持するオバマ大統領を支持すべきか。モルモン教徒ではあるが、伝統的な結婚を支持し、中絶に反対するロムニー氏を支持すべきか」といった議論が、福音主義の立場を取る多くのキリスト者を悩ませた。
「男女の伝統的結婚を守る協会」会長のトニー・ウォン氏は、「聖なる一票を投じる前に、神の御前に真摯に祈り、知恵を求めるべきだ。神の御手に選挙結果をすべて委ね、神が全能者であられることに委ねるべきだ」と有権者に語った。今回の不買運動に参加すべきか真剣に悩むキリスト者にとって、ウォン氏の助言はよい参考になるのかもしれない。