両氏による討論では、来年の米大統領選にキリスト者としてどのように関わって行くかについて見解が交わされた。両氏の討論はまず米福音主義者以外のすべての米国人にも深く影響を与えている米経済問題から始まった。両氏共に経済問題の克服は来年度の米大統領選の主要な課題となることに合意したが、経済問題の原因となる要因については異なる見解を示した。
ウォリス氏は「米経済は今までにないほどの不正・不公平な問題をもたらしています。無配慮、貪欲、自己中心的な活動が米経済危機を招きました。米政府の政策を心配するだけでなく、ウォール街で行われていることにも配慮していかなければなりません」と述べた。
ランド氏は「資本主義を適用する国々は富を生み出します。生み出された豊の再分配のことについて、富を創出する活動以上に捉われてしまうとき、惨めな状態が平等に生じるという結果が残るだけとなってしまうでしょう」と述べた。
その後両者は米共和党大統領候補者でモルモン教徒のミット・ロムニー議員について見解を述べた。ロムニー議員が大統領選において同氏がモルモン教の信仰をもっていることを公式的に発表するべきかについて、ランド氏は「その候補者が宗教をもって自身の存在を認知してほしいと望むのであれば、モルモン教の信仰を公に発表するべきでしょう。もしそれが自身が認知されるのにふさわしくないと思われるならば、私は一米国人としてその候補者にそれぞれの候補者の信教の自由を保護するように願います」と述べた。
ウォリス氏は「若い福音主義者たちは、ロムニー議員に投票しないとすれば、それは彼がモルモン教徒だから投票しないというわけではないと思っています。というよりも彼はウォール街から選出された候補者だからであると思います。私たちは政治家を選出する際に、彼らの道徳性に焦点を当て、彼らの中にある道徳観が政治に生かされるときに、どのような政治が生まれるかを考えなければなりません。ロムニー議員の宗教それ自体が選挙戦の主な議論となるべきではないと思います」と述べた。
また2009年から、オバマ政権の自動車産業・金融機関への救済や景気刺激策、医療保険法改正などの「大きな政府」路線に反対する大衆運動として生じているティーパーティー運動について、両氏はこのような草の根活動は重要な活動であるということについて合意したが、ティーパーティー運動が始まったきっかけと、運動の目標については見解を異にした。
ランド氏は、「ティーパーティー運動活動家の大部分は保守派の人々です。しかし彼らはもともと保守派の投票者の中であまり活動的ではない人々の集まりであったと思います。この運動に関わっているリベラルの人たちはとても少数だと思います」と述べた。
ウォリス氏は「極端にリベラルな政策はキリスト教徒が選ぶべき政策ではないと思います」と述べ、一部ティーパーティー運動活動家らの関心が米小説家であらゆるかたちの「信仰」や「宗教」を否定し、あらゆる形の集団主義や国家主義と戦い個人の権利を守る思想を展開する思想家としても知られているアイン・ランド氏にあることを指摘した。ウォリス氏は「私たち(福音主義者)は他の兄弟とともに歩む立場をとります。財政赤字は国家の道徳的課題でもあり、財政赤字を削減する方向に歩む必要があります」と述べた。
また来年度米大統領選挙共和党候補者で、セクハラ疑惑が浮上しているハーマン・ケイン氏については、両氏共に「候補者は選挙選で投票者の目に触れ公に出る際に道徳的な背景を詳らかにできなければならない」との見解で一致を示した。
ランド氏は「ケイン氏の自身のセクハラ問題に対する対処法があまりに稚拙であることに驚いています。この問題について選挙で公の立場に立とうとするなら完全に潔白にしなければなりません」と述べた。
ウォリス氏は政治家を選出する際、政治家の個人的な振る舞いや結婚生活の状況、また子どもに対する接し方についても考慮する必要があるとし、「このような個人的な生活面での振る舞いが悪いと長期にわたる大統領選の方向を悪化させてしまいます」と述べた。
米国の先行きについて、両氏は「神の存在が米国を再び偉大な国家にするために重要である」という信仰で合意した。ランド氏は「党派間争いや廃退した政治システムによって政党の政策がこう着してしまいます。多く与えられる者には多くの期待がかけられます。自由な国家とそれを導く政府へのあこがれは全世界の人々が抱いているものです」と述べた。