日本聖公会(東京・新宿)は、第11回ウィリアムス主教記念基金記念講座の講師として、英国聖公会からアンドリュー・ポール・ディビィー司祭(43、神学博士)を招聘し、10月17日から1カ月間、各地で記念講座を開催している。同司祭は今月7日、浅草聖ヨハネ教会(東京・台東区)で講演し、21世紀のグローバル都市に住むキリスト者は教会内に出会いと協働を目指す革新的な空間を創出することが急務と語った。=写真=
ディビィー司祭は講演「グローバル都市の諸問題に教会はどう答えるのか」で、都市に人口が大量流入することで価値観や信仰の流入が生じ、対話や超教派的な協力のための新しい可能性が可能になると説明した。移住者の流入の弊害として民族間の不和、自由主義的な白人の指導部との戦いといった社会問題が見られる中で、ロンドンのキリスト教会は、アフリカやアジアからの移住者に教会の生き残りと成長を依存しており、多様な断層を生きる人々の位置を理解し「快適過ぎる程の内向き傾向から離れるよう努力」することが今、求められているという。
ディビィー氏は「私たちは、繁栄の機会や新しく生き生きした多様性を持ち合わせた集団の可能性を求める闘いの中にいて、私たちが持っているものを用いることによって、地域の不一致、恐れ、不安を克服するために、断層地域の人々に協力することができるのではないでしょうか」と述べ、キリスト教会は、この共同体的な空間を提供することによって「神の新しい秩序」を実現していくべきと語った。
ディビィー司祭の来日を前に記念基金運営委員会が発行した会報によると、英国では1970年以降の産業の不振で都市の貧困が深刻化した。英国聖公会はこれをうけて、都市の問題について調査を開始し調査書『都市における信仰』(1985)を発表。これ以降、同聖公会は都市における貧困の問題と取り組むことになった。ディビィー司祭は、聖公会事務局でこの問題を扱う部署の責任者で、社会のグローバル化と都市化のキリスト教信仰への影響と教会のあり方について研究を重ねている。
ウィリアムス主教記念基金は、聖公会と聖公会関係学校の協働プロジェクトとして1975年に提唱され、2年後に正式に発足した。1859年に米国聖公会最初の宣教師として来日したチャンニング・ムーア・ウィリアムス主教にちなんで命名された。キリスト教に基づく教育を日本の青少年に提供しようと同主教によって創設された立教学院ほか聖公会系学校だったが、戦前中の軍国主義化や戦後の世俗化の波をうけ、キリスト教教育の主体性・独自性が失われつつあったという。クリスチャンの人材養成が後退し関係者たちの危機感がつのる中、当時の立教大総長、尾形典夫氏は、当時同校が米聖公会の援助で行ってきた学術交流プログラムを継承発展させることを願い、海外からの著名なキリスト教講師の招聘や発展途上国からの研修員の補助を目的とする基金設定を提唱した。現在約1億8千万円を保有しており、これまでに元カンタベリー大主教のラムゼー師と各専門分野の講師を招聘、海外からの研修生として24人の来日を可能にした。