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北アルプスのふところから神の懐へ

工藤公敏牧師「北アルプスのふところから神の懐へ」(8)・・・無条件降伏

2009年6月30日13時19分 コラムニスト : 工藤公敏
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関連タグ:工藤公敏

無条件降伏

私が小学校二年生の夏は、日本が太平洋戦争に負けた年である。食べ物も不足し、着る物も足りなかった。東京に供出する食べ物のために、山に行って、木の若芽を摘み干して袋に入れて学校に持っていった。ドングリを拾って学校に運んだ。山にある麻を干して供出した。これは服やズボンを作る材料にしたようだ。タバコのためにイタドリの葉っぱを沢山集めた。食事も共同で作って食べるようになってきた。カボチャや、サツマイモ、ジャガイモの入っているご飯が配られた。小学校に入ると、お菓子も配給にならなかった。ひもじい思いをした。

八月十五日のお昼頃のことであった。天皇陛下の重大放送がされた。日本が無条件降伏をし終戦を迎える放送であった。私はその放送を遊び仲間の、二つ年上の金原利光君の家のラジオで聞いた。子ども心にも大変なことが起こったと感じた。セミの鳴く暑い日だった。アメリカ軍が上陸して来て、女の人を捕まえて連れて行ってしまうとか、日本刀を馬小屋の干し草の中に隠しておいた方が良いとか色々な噂が伝わってきた。耳を剃られてしまうとか恐怖の話が伝わった。

蜂の巣探し

子どもの頃の泳いだ場所は、高瀬川が多かった。北アルプスから雪解けの水が高瀬川に流れ込んでいるので夏でも水が冷たかった。先輩たちの泳ぎを真似して、私も蛙泳ぎが出来る様になった。上から見ると蛙が泳いでいる形の平泳ぎのことである。遊び仲間は、ギャング集団であった。国民学校の上級生を頭に、下級生まで皆で夕方遅くまで夢中で遊んだ。

泳いだ後は、川の流れを変えて川を干して、カジカや岩魚を捕まえた。その場でたき火をして焼いて食べたりした。とにかくおなかがペコペコだった。地蜂の巣を探す遊びを時々した。から松の木には、餌を探しにお尻に白い線の入った小さな蜂が集まって来ていた。その蜂の名はリスガリと言った。この小さな蜂は地面の中に蜂の巣を五段もつくるのだ。

その蜂は、蛙の筋肉が大好きだ。私たちはその餌になる蛙を探した。青蛙を捕まえるとその蛙を地面に叩きつけた。蛙が気絶したのを確かめて、手足から皮をむき筋肉を取り出した。筋肉の団子を作り、細かい真綿に結びつけた。木の枝に気絶して皮を剥がされた蛙を刺してから松に餌を探しに来ている蜂の近く持って行った。蛙についている蜂を真綿のついている蛙の筋肉に移させるのである。一度で成功しないこともある。辛抱強く繰り返していると蜂が真綿のついている蛙の肉をくわえて自分の巣に飛び立つ。その真綿を目印に後をつけていくのである。この時の胸の鼓動を今も覚えている。普通は山の中や、田のあぜなどに蜂の巣がある。蜂の巣を見つけると一旦家に帰り日が暮れるのを待つ。夕暮れを待って蜂が飛べなくなった頃、蜂の巣を取ることを始める。蜂の巣の入り口でセルロイドなどを燃やすと蜂が酔って動けなくなる。その後、土を掘り起こして蜂の巣を採り、獲物を家に運ぶのである。大きな西洋皿のような蜂の巣をフライパンで温めると蜂の子が沢山出てくる。それをご飯に入れて蒸すと蜂ご飯が出来上がる。長野県では大のご馳走であるのだが、ウジムシのような蜂の子を見向きもしない人だっていた。

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◇

工藤公敏

工藤公敏

(くどう・きみとし)

1937年、長野県大町市生まれ。基督兄弟団聖書学院、ルーサー・ライス大学院日本校卒業。基督兄弟団理事長、同聖書学院院長など歴任。基督兄弟団目黒教会牧師、キリスト再臨待望同志会会長、目黒区保護司。著書に『北アルプスのふところから神の懐へ』など。(2023年4月14日死去、プロフィールは執筆当時のものです)

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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