ローマ教皇フランシスコは8月23日、冤罪により33年間収監され、今年初めに釈放されたイタリア人男性ベニアミーノ・ズンチェドゥさんと個人的に面会した。面会はバチカン宮殿の図書室で行われた。
現在60代のズンチェドゥさんは、1991年にイタリア西部のサルデーニャ島で羊飼い3人を殺害したとして有罪判決を受けた。事件は人里離れた山岳地帯で夜間に発生し、ズンチェドゥさんは唯一の目撃者によって犯人に仕立て上げられた。目撃者は当初、犯人を特定できなかったと供述していたが、後にズンチェドゥさんを告発。警察からの圧力が強かったと伝えられている。
確かな証拠がなかったにもかかわらず、ズンチェドゥさんは有罪判決を受け、終身刑を言い渡された。刑務所で過ごした年数は33年に及び、その間、過酷な環境に耐え、11人の受刑者と房を共にした。
収監中もズンチェドゥさんは、神に対する信仰から力を得、無実を主張し続けた。刑務所での生活は非人道的なものだったというが、自分より恵まれない人々を助けることで日々を生き抜いた。また、神の変わらぬ愛を信じ、家族を思うことで解決を見いだした。
今年1月、イタリアの裁判所は、証拠が不十分で目撃証言の信頼性にも疑問があるとして、ズンチェドゥさんの有罪判決を取り消した。これにより、人生の半分以上に及んだ不当な収監生活に終止符が打たれた。
教皇との面会で、ズンチェドゥさんは自身の弁護士との共著『Io Sono Innocente(私は無実である)』を贈呈した。5月に出版されたこの本には、ズンチェドゥさんが受けた試練と、それを生き延びるために信仰が果たした役割が記されている。
キリスト教信仰を堅持するズンチェドゥさんは、その長年にわたる苦しみにもかかわらず、自身を冤罪で告発した目撃者に対する赦(ゆる)しを公に表明している。