オーストラリア最大の都市シドニー郊外の教会で15日午後7時10分(日本時間同)ごろ、男が刃物で主教を刺し、止めに入った他の3人にもけがを負わせる事件が発生した。主教を含め4人はいずれも命に別状はないという。
男に刺されたのは、シドニー中心部から西に約30キロのウェイクリーにある「良き羊飼いキリスト教会」のマー・マリ・エマニュエル主教(53)ら。AFP通信(英語)によると、同教会は現地にある中東の少数民族アッシリア人のコミュニティーの中心的な存在で、信者の多くは迫害や戦争などのためイラクやシリアから逃れてきた人々だという。
事件が発生したのは、礼拝が行われる日曜日ではなく月曜日の夜だった。同教会のホームページ(英語)によると、同教会は毎週月曜日午後7時から、アッシリア語による聖書の学び会を行っていた。
聖書の学び会の模様はライブ配信されており、インターネット上には襲撃の場面とされる映像が投稿された。映像には、黒服の男が講壇に立つエマニュエル主教に近づき、いきなり刃物で主教の顔や頭を何度も刺すなどして襲う様子が映っている。
AFP通信によると、負傷したのは20代から70代までの男性4人。オーストラリアの主要ニュースサイト「news.com.au」(英語)によると、負傷者の1人は同教会のアイザック・ロイエル司祭(39)で、男を止めに入ったところを刺された。
地元警察の発表(英語)によると、男は16歳の少年で、信者らに取り押さえられ、その場で逮捕された。男は襲撃の際、自らも負傷しており、逮捕後には病院で手術を受け、現在警察の監視下にある。なお、男の年齢については15歳とする報道もある。
シドニーでは2日前の13日にも、大型ショッピングモールで40歳の男が、買い物客らを刃物で無差別に襲い、6人が死亡する事件が発生したばかり。この事件では、女性5人と警備員の男性1人が犠牲になり、男は警察官に射殺された。
同教会は事件後、インスタグラムなどのSNSに短い声明(英語)を投稿。入院中のエマニュエル主教とロイエル司祭の容体は安定していることを報告した上で、祈りを求めた。また、2人の願いでもあるとし、2人を刺した男のためにも祈るよう要求。この他、この事件を受け、多くの人が現場に駆け付け暴徒化する事態に陥ったことから、平和のうちに教会の敷地内から立ち去るようにも求めた。