日本と世界の平和のためにクリスチャンが教派を超えて祈る「日本国家祈祷会」が1日、大阪市内のホテルで開かれ、全国から約300人が集まった。クリスチャンの国会議員や首長、地方議員らも出席する中、伝道者の有賀喜一牧師は、「平和をつくり出す者として、イエス・キリストの血潮によって心清くなり、この愛に押し出されて行動の人にならなければなりません」と力を込めた。
教派や政党の違いを超えて、クリスチャンの政治家も巻き込み、心を一つにして祈ろうと、関西の牧師と実業家らが中心となって企画した。発起人会を代表して、冒頭にあいさつをした村上好伸牧師(カリスチャペル)は、「この日本に大きな神様の働きが起こるように、リバイバルが起こるように、私たちは力強い祈りをもって進んでいきたい」と話した。村上牧師に続いて、クリスチャンの議員や首長があいさつに立った。
一昨年の衆院選で初当選した遠藤良太氏は、クリスチャンの家庭で育った自身の生い立ちを話しながら、「神様の導きの中で支えられてきた」と、これまでの歩みを振り返った。国会会期中にはクリスチャンの議員が集まり、定期的に祈祷会を行っていることを紹介し、「多くのクリスチャンの議員が起こされて、国のため、地方のために活動できるようにぜひお祈りいただければ」と話した。
昨年夏の参院選に牧師として出馬し、初当選を果たした金子道仁氏は、選挙戦での勝利を振り返り、「主の前に心から感謝し、栄光をお返ししたい」としつつ、「ただ、これは終わりの奇跡ではない」と話した。「これからもっと主に大いなることを期待していくようにと励ましを頂いたものだと思っています。遣わされた者として、どのような使命をもって国政という場所で働きをしていくのか、祈り、探りながら活動しています」と語った。
不思議にも、議員となってからすぐに福音を語る機会が多く与えられたという。旧統一協会を巡る問題を受けて、多くの議員から聖書の教えについて聞かれ、自身の信仰について証しする場面も多くあった。
「まさに、『遣わされることがなければ、どのようにして宣(の)べ伝えるのでしょうか』(ローマ10:15)との言葉が、私の上に実現したと思っています。議員会館のあの部屋に行ったら牧師さんがいるから、福音を聞きに行こう。祈ってもらおう。そんなふうにいろんな方が寄ってきてくださる。そんな永田町の教会を目指しています」
今年は特に、公約として掲げる教育バウチャー制の導入に取り組んでいきたいという。また、自身が国政に遣わされた意味として2つを挙げた。1つ目の意味は、自身が目となり耳となり、祈りの課題をキリスト教会と共有すること。「私が外交官として働いていたときとは全く違う安全保障環境になっている。また、さまざまなところで社会の破れ口が広がってしまっている。この国に御心がなるように、この国から周りの国を祝福するような神の恵みが流れていくように、ぜひ共に祈り、主に期待していきたい」と語った。
2つ目の意味は、国政の場に御心がなるように行動することだ。「特にこの時代、平和をつくる者は幸いですという主の言葉をどのようにして具体的に訴えていくべきなのか。そのことを祈って、発言していかなければいけない。どうか主からの知恵が与えられるように祈っていただきたい」と話した。
草加市長の山川百合子氏は、クリスチャンの政治家で昨年3月に召天した夫の瀬戸健一郎氏との思い出を語りつつ、政治を通じて、神の愛を伝えていきたいと語った。「市長をやっていく中で、さまざまな問題があり、分断が起こされようとするときに、『愛だよ、愛。百合ちゃん、愛だよ、愛』と夫が繰り返し私に伝えてくれたその言葉を常に思っています。政治をやっていく上で、さまざまなことがありますが、愛というものを常に繰り返し心に思って、しっかりとやっていきたい」と話した。
岐阜市長の柴橋正直氏は、「住民自治の現場は、24時間365日、常にどこかで何かが起きている。まさに住民自治とは生き物だといっていいぐらいの環境で仕事をさせていただいている」と語り、「住民の要望や相談、さまざまな人生の悩みまで、いろんなことをお聞きしながら、仕事をさせていただく。ある意味で、牧会者の先生方と同じような仕事をさせていただいているのが、クリスチャンの政治家ではないか」と話した。
全国の地方議会でクリスチャンの政治家が多く起こされていることを紹介し、「一人一人が主と共に励ましを得て、地域の困っている方々のために、政治を通じ、またクリスチャンとして福音伝道を通じて、皆さんの幸せに貢献できるようお祈りいただきたい」と語った。
自民党元幹事長の石破茂氏も、ビデオでメッセージを寄せた。「熊本バンド」の一員であった牧師の金森通倫(みちとも)を曽祖父に持ち、それから数えて4代目のクリスチャンであることを紹介し、「自分のしていることが、本当に主の御心にかなうものであるかどうかということは、常に問いかけております。そして、もし御心にかなうものであるならば、ご用のためにお用いくださいと常に祈っております」と話した。
ルカによる福音書18章にある有名なパリサイ人と収税人の祈りを引用し、「常に、罪人の私をお赦(ゆる)しくださいと。誰に聞かせるのでもないけれど、それは神との対話。その気持ちだけは、決して忘れてはならないと思います」と語った。
その上で、「どうぞ世界の平和のために、人々の幸せのためにお祈りください。また、私ども政治に携わっております者が、御神の御心に沿うような働きができますように祈っていただきたい」と話した。
「平和をつくる者は幸いです」と題してメッセージを伝えた有賀牧師は、「イエス様こそ、平和をつくり出す筆頭の模範」と強調。「模範だけでなく、イエス・キリストは十字架に自らの命を捨てられ、3日目によみがえって、平和の道をつくったのです。神に反逆した全ての人々が、このイエス・キリストによって平和の道に生きる者とされたのです」と説いた。
平和とは、単に争いがない状態を指すのではなく、この社会を構成する政治や経済、教育、芸術、マスコミといったあらゆる領域を神が用いて、人々を最高の幸せに導いていくことを意味すると説明した。その上で、政治の領域にも、神と共に平和をつくり出そうとするクリスチャンが必ず必要だとし、「どうか一人でも多く、政治に関わるクリスチャンの方々が起こされていきますように。神の御心にかなう、神の国を建て上げる尊い使命をもって頑張っていただきたい」と話した。
また、平和をつくり出す人の絶対の条件は「何といっても純真さ、純粋さ、純潔。清くなければなりません。もう一つは、言うだけでなく行動に移すこと」と強調。さらに、「人をつくり変えるのは、神様の力。人間にはできないことです。でも神にはできるのです」と説き、「私たちはその神様を信じているのです。神様の心を、心としているのです。ですから私たちは、この日本を変えることができるのです。神様と一緒に働くのです」と力を込めた。
最後には、「日本をつくり変えていくのは、政治家だけでなく、実業家だけでなく、教育家だけでなく、牧師だけでない。ここに集まっている私たち全員が、神様の御国のために平和をつくり出す人ではないでしょうか」と呼びかけ、「ここから始まってまいります」と日本のリバイバルに期待を示した。
有賀牧師のメッセージに続き、会場全体で祈る時を持った。発起人会の高田義三牧師(チャーチ・オブ・クライスト・ニュージーランド日本・大阪教会)、富浦好之牧師(国分福音教会)、大久保みどり牧師(主イエス・キリスト教会)、小平牧生牧師(ニューコミュニティ)がそれぞれ代表して、▽日本と世界各国のリーダーのため、▽教会の成長、聖書的な信仰が守られるため、▽戦争のない、隣人愛に満ちた世界が実現するため、▽人が世界の良き管理者となり、自然環境が守られ、神の御旨が世界に実現するために祈りをささげた。
高田牧師は、地球規模での気象変動、疫病のまん延、大地震などの自然災害に加え、貧困、飢餓、戦争により、毎日多くの命が奪われているとし、このような中で重責を担う、日本と世界各国のリーダーたちのために神の祝福を祈った。「高い地位にあるすべての人のために願い、祈り、とりなし、感謝をささげなさい」(1テモテ2:1)の聖句を引用し、「御力をもってお一人お一人に豊かに臨んでくださり、あなたからの知恵と判断の心をお与えください。神に喜ばれる決断を下し、それらを行い、実を結ぶことができるように導いてください」と願った。
富浦牧師は、「私を神の御言葉に、上限付けずに従順に従う謙遜なキリスト者にしてください。もっと神様の御言葉に身を寄せ、祈りに時間をかけ、上からの知恵と聖霊の力を付与されて、主に召されている人にふさわしく、救霊の勇者に成長させてください」と願った。その上で、「日本、世界に大きな影響と、無視できない感化がもたらされていくように、私たちを聖別してください」と祈った。
大久保牧師は、「今、世は戦争に次ぐ戦争、そして多くの災害が起こっております。この世は闇の力、悪しき者の故にこのようになっておりますが、私たちの主は、十字架で既に勝利されました」と強調した。「核の保有や武器弾薬、戦争ではなく、それぞれの民族が守られ、一方的に国境を越えることがないように。悪しき力を砕いてください。イエス・キリストの御名によって、イエス・キリストが全地の王であることを、私たちが大胆に宣べ伝え、祈り続けることができますように」と願った。
小平牧師は、神はこの世界を良いものとして創造し、人は本来、全ての必要に満たされ、喜びと楽しみをもって生きることができたにもかかわらず、「あなたを離れた私たち人間は、与えてくださったその素晴らしさを味わうことができない、罪と欲望の現実の中に生きています」と告白した。こうした罪の現実は、クリスチャンや教会においても無縁のことではないとし、「ただ豊かで、大きく自分たちの願いが実現することを、あなたの祝福とすり替えるようにして歩んできたことを悔い改めます」と祈った。
その上で、「私たちが真の神であるあなたに立ち返り、互いに愛し合い、助け合い、支え合い、分かち合うことによって、貧困や搾取のない世界を実現させてください」と願い、「そのために、主の弟子である私たちを、あなたの愛と義に生きる者としてください」と祈った。また、「地球の温暖化や環境破壊に歯止めをかけ、全ての被造物が調和して憩う世界を実現するために、私たちをこの世界の管理者として、忠実な者として生きることができるように用いてください」と祈った。
さらに、「科学技術の進歩に伴って生まれている新たな弊害や課題の中で、私たちが神を正しく畏れ、あなたの御言葉にある聖書の倫理と命が軽んじられることがありませんように」と願い、「むしろ主にあって科学技術が有益に用いられ、あなたの栄光が現されて、私たち人間の生活の向上に資するものとなりますように。そして人々が将来に希望を見いだして、与えられた務めに励み、喜びをもって家庭を築き、子どもたちを育てていくことができる社会を築いていけるよう導いてください」と祈った。
会の終わりには全国から集まったクリスチャンの議員たちのために、発起人会の牧師たちが手を置き、会場全体で祝福を祈った。
司会は、万代栄嗣牧師(松山福音センター)と加古川市議会議員の藤原みつえ氏が務め、ソプラノ歌手の野田朋香、ピアニストの野田常喜が特別賛美をささげた。また、日本の伝統的な舞や琴の演奏による賛美もささげられた。