前ローマ教皇である名誉教皇ベネディクト16世(95)が「重篤」な健康状態にあることを、現ローマ教皇フランシスコ(86)が明かしたことで、世界各地のカトリック信者たちが名誉教皇のために祈っている。
教皇フランシスコは28日の一般謁見で、名誉教皇ベネディクト16世のために「特別な祈り」をささげるよう信者らに求めた。
「名誉教皇ベネディクト16世を覚えてください。彼は重篤です。主が彼を慰め、最後まで教会への愛の証しにおいて彼を支えてくださるよう、主に求めてください」
バチカン(教皇庁)広報局は同日、具体的な内容は明らかにしなかったものの、「年齢が進んだため」名誉教皇ベネディクト16世の病状に「悪化」が見られたと発表。翌29日には、状態は深刻だが安定しており、注視を続けていると発表した。
バチカンのマッテオ・ブルーニ広報局長は、「名誉教皇は昨夜、よく休むことができ、意思も明瞭で注意力も強くお持ちでした。本日も病状は良くはありませんが、現時点での状況は安定しています」と述べた。
名誉教皇ベネディクト16世は2013年、高齢を理由に、存命中の教皇として約600年ぶりに退任。以来、バチカンのマーテル・エクレジエ修道院に住み、医師による24時間体制の支援を受けてきた。
教皇フランシスコは28日、一般謁見後に見舞いにも訪れた。
教皇フランシスコの祈りの呼びかけに対し、英イングランド・ウェールズ・カトリック司教協議会会長のビンセント・ニコルズ枢機卿は、「教皇フランシスコと共に、名誉教皇ベネディクト16世のために祈り、主がこの時にあって彼を支え、慰めてくださるようにお願いしましょう」と応えた。
英LBCラジオに出演したニコルズ枢機卿は29日、名誉教皇ベネディクト16世の思想家、神学者としての「卓越した力と能力」をたたえ、教皇時代には「理性の世界と信仰の世界」の間の「健全な対話」を望んでいたと語った。
また、名誉教皇ベネディクト16世のイエス・キリストに関する2冊の著書について、「最も複雑な聖書の課題に対し、最も分かりやすい方法で取り組み、キリスト教にとって絶対的な中心であるイエスの生涯について、非常に学術的でありながら、しかもシンプルな方法で開示してくれた」と述べ、称賛した。
米国では、ニューヨーク大司教のティモシー・ドーラン枢機卿が声明で、「神の善に対する大いなる信仰をもって、私は教皇フランシスコと共に名誉教皇ベネディクト16世のために祈ります。また、ニューヨーク大司教区のカトリック信者と全ての善意ある人々にも、同じように行っていただくようお願いをします」と述べた。
サンフランシスコ大司教サルバトーレ・コルディレオーネは、名誉教皇ベネディクト16世を「偉大な魂であり、何百万もの人々に多大なインスピレーションを与えた人」と呼び、人々に共に祈るよう求めた。