2014年に過激派組織「イスラム国」(IS)によって先祖代々の故郷である都市・モスルから追い出されたイラクのキリスト教徒たちは、有志連合の軍事攻勢を受けて、ISの民族・宗教的な大虐殺を支援した者たちから報復を受けることなく、無事帰還できるようにと祈っている。米クリスチャンポストが18日に報じた。
カトリック・ニュース・サービス(CNS)によると、「彼らは2014年の夏に追い出された後、この日を待っていた。そして多くのキリスト教徒たちがそれ以来ずっと非常に悲惨な状態で暮らしてきた。ぜひ戻りたいという人たちもいる」と、東方アッシリア教会のエマニュエル・ヨウクハナ神父は語った。
モスルが占拠されたとき、キリスト教徒や他の少数者たちはISの手によってひどく苦しめられた。ISは、処刑を行ったり、ジズヤと呼ばれるイスラム教の人頭税を集めたり、一晩に約10万人のキリスト教徒を故郷から無理矢理離れさせたりした。
カルデア派カトリックであるイラクのキルクーク大司教、ヨウシフ・トマス・ミルキス氏はCNSに対し、「何もかもが複雑だ。それでも、私たちはダーイッシュ(ISを意味するアラビア語の俗語)の後に何が起きるのかを待っている。なぜなら、それらの犯罪者たちはたぶんイラクから投げ出されるだろうが、その精神構造は彼らを歓迎した者たちの中に残っている」と述べた。「社会にとても根深いこのような狂信主義から、この国をどうやって癒やすのか?」
また、カトリックのニュースメディア「フィデス通信」も20日、「モスルへの帰還を望む難民たち」という見出しの記事を掲載した。
「(イラク北部の都市である)アルビールやディバガ、キルクークにある難民キャンプで入院している人たちが心配しているのは、モスルには居残りを余儀なくされた友人や親戚がたくさんいるけれども、この新しい前進をもって故郷に帰ることができると考えているので、たとえ何があるのか分からなくとも、ホッとしている人たちも多い。家屋や事業、礼拝の場所が破壊されてしまったことが気がかりではある。この後になっても、やらなくてはならない仕事がたくさんあるだろう」
これは、世界80カ国で活動している80のNGOを取りまとめている「国際ボランティア・サービスのためのキリスト教団体連盟」(CIDSE)のコーディネーターをアルビールで務めている、ムスタファ・ジャバー氏の言葉である。
「一昨日、多くのキリスト教徒は、この戦争の前に大きなキリスト教徒の共同体が生活していた場所であるカラコシュが解放されたというニュースを聞いて、大喜びした」。だが、複雑な感情がある。「持続不可能な行き詰まりに終止符を打ちたいという、この解決策があとちょっとで満たされるというところで、何も持っていないたくさんの怯(おび)えた人たちがやって来ることに対する恐怖がある。新しい難民のニーズに十分応えきれないことを私たちは恐れている」
その一方で、アルビールから離れた所に火のついた油田が見える。「カリフが支配する地域に近いキルクークでは、情勢が非常に緊迫している」とジャバー氏は言う。
2年間、CIDSEはディバガ村にあるアルビールのキャンプや、キルクークにあるアンカのキャンプにいる、住処(すみか)を追われた人たちに寄り添ってきた。ボランティアの活動はとりわけ子どもたちに対するもので、幼児のための託児所を設置する世話をしている。それによって、母親たちが仕事をしたり、裁縫や工芸講座に参加できるようにするためである。
子どもたちや若者向けのスポーツ活動が企画されており、英語やクルド語の講座もある。幼児を持つ女性たちのように、最も脆弱(ぜいじゃく)な人たちに特別な気遣いがなされており、その一方で障がいや特定の治療および医薬品を待つ人々に特別な注意が向けられていると、CIDSEはフィデス通信に送られた文書の中で述べた。