バラク・オバマ米大統領は、中国・杭州で開催される20カ国・地域(G20)首脳会議(杭州サミット)での訪中の際、宗教の自由に関して問題提起するよう要請を受けた。
オバマ氏は4、5の両日、G20の開催地である中国東部の浙江(せっこう)省の省都、杭州を訪れる。キリスト教徒が多い浙江省では、中国政府が数カ月間にわたって教会の十字架の撤去を進め、最近は勢いが弱まったものの、既に数百本の十字架が撤去されている。
米国の独立組織「国際宗教自由委員会」(USCIRF)は、宗教の自由について習近平主席に問題提起するよう、オバマ氏に要請している。また同委は、思想や宗教などを理由に不当に逮捕された「良心の囚人」らの釈放のために、大統領が圧力を掛けることを望んでいる。
同委の議長でイエズス会の司祭であるトーマス・リース氏は、「中国政府は世界の舞台に急進的に進出してきていますが、国内では急進的に国民の人権や宗教の自由を侵害しています」と語った。
「政府による権利の侵害は、G20の開催地である浙江省で特に強まっていますが、全国的にも起きています。中国政府は、国民の権利を擁護する個人や団体の声を抑えようとしているのです」
杭州ではG20の開催に先行し、治安維持の名目で諸教会は既に閉鎖され、全ての病院で宗教行為が禁じられている。
中国政府はあらゆる宗教を取り締まるため、強制的な失踪や拷問、勾留、投獄などを継続していると、同委は指摘している。
「良心の囚人」の中には、十字架の撤去に反対して今年投獄されたバオ・グオファ氏とシン・ウェンシャン氏らがいる。
米国に本部を置くキリスト教人権団体「チャイナエイド」の創立者で代表の傅希秋(ボブ・フー)氏は、オバマ氏の中国訪問の準備や助言のために招かれた、宗教の自由や人権擁護の専門家ら7人の1人だ。
傅氏は、8月30日にホワイトハウスで行われた会議に出席し、スーザン・ライス米大統領補佐官(国家安全保障担当)に対し、中国の宗教の自由と人権について「1960年代の毛沢東主席による文化大革命以降で最悪の状況」と説明したという。
傅氏は英国クリスチャントゥデイの取材に応え、「オバマ政権は、中国に対する外交政策を優先する余り、迫害下にある中国の人権活動家や宗教的少数派を過去7年間で数百万人も見捨てました」と語った。
「大統領は、今回の中国訪問を最後の機会と受け止め、通常のレベルを超える何らかの行動を取るべきです。数え切れない牧師や司教、人権活動家らの逮捕について問題提起すべきです。より一層重要なのは、浙江省訪問中に同盟国と連携して強く発言し、米国が長年、宗教の自由や社会・人権問題を、持続可能な好景気や国際安全保障とセットで考えている姿勢を再度示すことです。全世界は、オバマ大統領がG20の期間中に、この取り組みを勇敢にリードするか否かを注視するでしょう」