岩手県奥州市衣川区の南股川に架かる5つの橋で、金属の中でも高額で取引される真鍮(しんちゅう)で造られた装飾品「擬宝珠(ぎぼし)」32個と、青銅で造られた橋名板4枚が盗まれていたことが5日、分かった。被害総額は330万円を超えるという。河北新報などが伝えた。
同紙などによると、擬宝珠が盗まれたのは、南股川に架かる鳴石橋、天河橋、霧山橋、河内橋、楢原新橋の5つの橋。昨年12月25日午後、奥州市職員が鳴石橋の擬宝珠計8個がなくなっているのを見つけ、近くの橋を調査したところ、他の4つの橋で擬宝珠計24個がなくなっていたことが分かったという。楢原新橋では、橋名板4枚もなくなっていた。
擬宝珠は金色の円柱形で高さは約30センチ。橋名板は長さ約30センチ、幅10センチ。いずれもねじで固定されており、ドライバーを使えば誰でも外せる構造だったという。
昨年12月21日午後には業者が鳴石橋を点検しており、その際には擬宝珠があった。そのため、21日〜25日の間に盗まれた可能性がある。最も上流の鳴石橋から最も下流の楢原新橋までは、約6キロほどの道のり。5つの橋は普段から人通りが少なく、街灯も設置されていなかったという。
毎日新聞によると、岩手県や奥羽市は、他の橋でも同様の盗難が発生しないよう、4日からねじをボンドで固定するなどの対応を取っている。
南股川は北上川水系の河川で、同県衣川村東部で北股川と合流し、衣川となる。衣川はさらに、同県平泉町で北上川に合流する。衣川は平安時代末期まで、蝦夷(えぞ)勢力と倭人(わじん)勢力とを分ける境界線となる川だったとされている。