中米ホンジュラス共和国第2の都市サンペドロスラでは、平均して1日に20人もの人々が殺害されており、死体安置所が常に忙しく稼動していることから、同市のある葬儀屋は「悪魔の巣窟となっており、神を信じる人々の間で本当に神はいるのかとの嘆きの声が生じている」と悲嘆の声を伝えている。9日、米クリスチャンポスト(CP)が報じた。
英ガーディアン紙の取材に応じた葬儀屋は「サタンそのものがこの都市に生きている。人が人をまるで鶏を殺すかのように殺している」と述べた。
ホンジュラス国立自治大学(NAUH)の報告によると、2012年に人口800万人の同国において平均して1日20人が殺害されてきたという。
これは住民10万人につき85.5人が殺害されている比率と換算できる。サンペドロスラは人口90万人以下の都市であり、英ガーディアン紙によると同都市に限った殺人率は10万人に173人の割合となるという。これは戦争中の地域を除いて世界でもっとも殺人率の高い都市であることを意味している。
取材に応じた葬儀屋は、15歳の頃から葬儀の仕事に携わっており、「若い頃は自然死によって亡くなられたかたの遺体を取り扱っておりましたが、最近は殺人による遺体を頻繁に取り扱っています。今日はめずらしい日で、6発から10発もの銃弾を打ち込まれた遺体を取り扱いました。遺体となった人々は機械工の方、学生の方、農家の方、ジャーナリストやドライバー、普通のビジネスパーソンの方などさまざまです」と明かした。
今夏ユーチューブに掲載された動画では、13歳の少年が自宅から外に出た瞬間銃弾が顔面に命中し死亡した状況が映し出されていた。
殺害された少年の叔母ルシアさんによると、神が少年の命を救ってくれるとの希望をもっていたという。ルシアさんは「彼が家に到着して、『おばさん、コーヒーを買ってくるよ』と言って家を出た瞬間、銃弾が命中しました。まるで屠殺場で暮らしているかのようです」と当時の状況を振り返り、罪のない多くの若者が近隣暴力団の活動によって殺害されている状況を明かした。
殺害された少年が通っていた小学校の担任教師のグラシア氏は「私は自分の信仰に疑問を抱くようになりました。このような時、神に尋ねています。『神よ、何が起こったのでしょうか。あなたはどこに行かれてしまったのでしょうか』と」と遺憾の念を伝えている。
南米の犯罪と治安を調査するシンクタンク「インサイト・クライム」共同ディレクターのスティーブン・ダドレー氏は「4月に資金洗浄を訴追していたトップの人物が銃弾で殺害され、5月も同犯罪を指導的に調査する人物が殺害されました。ホンジュラスは犯罪の渦の中に捕らわれています。麻薬密売、暴力団の闘争、政治的不安定、政治汚職問題などさまざまな問題が生じています」と伝えている。
米国務省によると、同国に密輸入されるコカインの8割はホンジュラス経由であり、米国内の刑務所から出所した人々が地元の麻薬市場で闘争を行っている上に地域政府も深刻な汚職問題に巻き込まれており、地域住民が助ける場所がないように感じさせていることが殺人問題をさらに悪化させているという。
ダドレー氏は「人々が頼る助け手がないと思う時、答えは自然と『より強力な武器をいかに所持することができるか?』ということに行き着くでしょう」と述べている。
より強力な武器をいかに所持するかという観念の下、銃撃戦が止まないことによって、同市における葬儀屋の仕事は多忙を極めるようになっており、英ガーディアン紙の取材に応じた葬儀屋は「(死体がいたるところにあるような状況にない)他の国に逃げる準備があります。すでに大勢のホンジュラスの国民がメキシコや米国などに逃亡しています」と述べている。