【CJC=東京】イスラム原理主義者約1万人が、エジプト南部の古代都市アシュートで7月30日、「イスラム、イスラム、キリスト者を侮辱しろ」と叫びながらコプト教徒(キリスト者)居住地区をデモ行進した。子ども数人が、大人の監視下に、壁に「キリスト者をボイコットせよ」とスプレーで落書きした。
アシュートはカイロ南方400キロ、人口100万人の大都市。モルシ大統領を追放した7月3日以来、連夜のデモやスプレーによる落書きを当局が規制出来ないことで、キリスト者の不安が増大している。
カイロで7月3日に、ムハンマド・モルシ大統領を追放する軍のクーデターが行われて以来、南部ではアシュートなど各地で、「モルシ追放」が少数派キリスト者の企みだ、と訴えるイスラム原理主義者の「憎悪キャンペーン」が発生している。
アシュートでは、「タワドロスは犬」とスプレーの落書きがあった。コプト教会の教皇タワドロス2世を非難するもの。キリスト者の住居、店舗、礼拝所には大きく十字架がペイントで描かれた例もある。
敵意に満ちた行動の続発に、権利擁護16組織の連合体が7月31日、人口の約1割を占めながら、慢性的な差別に耐えている少数派キリスト者の保護を当局に要請するまでになった。
米宗教専門RNS通信は、「イスラム原理主義者は責任を問われることもないから、喜んで行進を続けるだろう。いつかウチもやられるのでは」と30日にデモ隊が通過したアシュートのヨウスリ・ラヘブ通りに宝石店を構えるホッサム・ナビル氏(38)が語ったことを報じている。他の店もそうだが、ナビル氏もデモ隊が通り過ぎるまで店のシャッターを閉めた。「彼らは人差し指を立てのどを切るまねをする。わたしたちを虐殺するぞと脅し、またモルシの名をわたしたちの顔に向かって大声で叫ぶ」と言う。デモ隊が通過中に店に来た若い夫婦は、恐怖に身を固まらせた。
アシュートでイスラム原理主義者が強硬なのは、現地当局が弱体な一方、宗教の威力が強いこと。また貧困層が多く、生活が安定しているキリスト者へのねたみもある。
落書きは消してもすぐに描かれてしまうので、ガマル・アダム知事代行は、消去を止めた、とAP通信に語っている。市の清掃係が現場で原理主義者に捕まったら、暴行されるだろうとも言う。
アシュートの人口の4割を占めるキリスト者の生活は激変した。集合住宅の壁に、赤くばってんを付けられた十字架が描かれていたりした。夜の外出は控えられている。教会は午後の活動を止めた。富裕層の中には転出した人もいる。
「こんな抑圧を経験したことはない。毎日が踏んだり蹴ったりだ」とナビーネ・カマルさん(40)。薬剤師で10代の娘さんが2人いる。「怒っているし、不満一杯だが、ここに留まる」と言う。「わたしと主人が、事態はすぐに良くなる、と話しても娘たちは信じない。エジプトに失望し、脱出したがっている。しかし、個人的に、私は、全てが、わたしたちと国に良いものをもたらすと信じている。ムスリム同胞団の指導者モルシが大統領になって、同胞団統治が80年は続く、と思っていたが、ちょうど1年でダメになった。誰がこのことを信じていただろうか」。
クーデター以来、少なくともキリスト者7人が殺害された。負傷者は多数に上っている。
エジプトのキリスト者は政治に介入することを避けるのが常だった。しかし2011年の「アラブの春」以来、政策に発言を始めた。モルシ政権がイスラム色を強めるにつれ、発言も厳しくなった。タワドロス2世は、教皇に選任されると、大統領批判を強め、信徒に向けては、積極的に政治に参画するよう勧めるようになった。一方、イスラム教過激派は、キリスト教はイスラム教の敵であり、コプト教徒に少数派であることを忘れるな、と警告していた。
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