神の指によって悪霊どもを追い出しているのなら
ルカの福音書11章14~26節
[1]序
今回は11章14節から26節の箇所。まず大きな流れを確認します。
9章51節から19章27節では、主イエスの一行がガリラヤからエルサレムへ進む途上の姿を描いていることを何回か確認してきました。今回の箇所は、この大きな流れに属し、11章14節から54節では、パリサイ人たち(律法主義)との対決を中心にしています。
14節から26節では、主イエスが悪霊を追い出すことをめぐり、主イエスの権威を明らかにしています。
27、28節では、みことばに聞き従うことの幸いについて。
29節から36節では、天からのしるしを求める人々に対して。
37節から54節では、パリサイ主義に対して詳しい批判。
このような大きな流れを見失う事なく、今回の箇所を味わいましょう。
[2]事実と反応・解釈
(1)事実
「イエスは悪霊、それも口をきけなくする悪霊を追い出しておられた」(14節前半)。主イエスは解放者。病める者の癒やし主。ガラテヤ5章1、13節参照。
(2)三つの反応、解釈
①「群衆は驚いた」(14節)。一時的なものである可能性 → 24~26節。
②「しかし、彼らのうちには、『悪霊どものかしらベルゼブルによって、悪霊どもを追い出しているのだ』と言う者もいた」(15節)。非難。主イエスの権威を認めず冒涜。
③「また、イエスをためそうとして、彼に天からのしるしを求める者もいた」(16節)、要求 → 29節以下参照。
[3]「神の国はあなたがたに来ているのです」(20節後半)
(1)主イエスに対する非難に論駁、「神の指」(出エジプト記8章19節参照)によって悪霊どもを追い出している事実を確証。
(2)中心点、「神の国はあなたがたに来ているのです」(20節)
①21、22節 → 主イエスの勝利、勝利者主イエス。主イエスにあって、キリスト者・教会も圧倒的な勝利、ロマ8章37節を前後の文脈の中で。
②23節、中立は有り得ない。
③24~26節、逆戻りしないように。最後まで死に至るまで忠実、黙示録2章10節。
[4]結び
(1)勝利者主イエス
癒やし主、主イエス。あらゆる病める人々へ勝利者主イエスの喜びのニュース、解き放ちの福音を。主イエスは、キリスト者・教会に、「敵のあらゆる力に打ち勝つ権威を授け」(10章19節)て下さっている事実に立ち福音宣教を。
(2)中心、「神の国」
事実と共に、その意味の理解、解釈が大切。どのように考えるか、考え方・思想の戦い。
土台は、唯一の生ける真の神が万物をご統治なさっている神の国の事実に立ち、すべてのことを理解して行く。このお方の統治のもとに、罪の贖い、救いの業が押し進めて行かれるとの、この世(世界)の理解(世界観)。
そして私たち各自についての理解(人間観)。神、人間、世界について聖書が明らかにしていることに基づきすべてのことを判断。
(3)「あなたがに来ているのです」
主のいのり、「みこころが天で行われるように地でも」。
宗教改革者の一人が理解しているように、「地」とは、私たちの心であり、生活であり、生涯。私たちの心、生活、生涯において主なる神が第一に。
宮村武夫(みやむら・たけお)
1939年東京生まれ。日本クリスチャン・カレッジ、ゴードン神学院、ハーバード大学(新約聖書学)、上智大学神学部修了(組織神学)。現在、日本センド派遣会総主事。
主な著訳書に、編著『存在の喜び―もみの木の十年』真文舎、『申命記 新聖書講解シリーズ旧約4』、『コリント人への手紙 第一 新聖書注解 新約2』、『テサロニケ人への手紙 第一、二 新聖書注解 新約3』、『ガラテヤ人への手紙 新実用聖書注解』以上いのちのことば社、F・F・ブルース『ヘブル人への手紙』聖書図書刊行会、他。