ソロモンよりまさった方
ルカの福音書11章29~32節
[1]序
今回もルカの福音書を読み進めて行きます。今回は11章29~32節の箇所。11章28節で見たように、主イエスは、「いや、幸いなのは、神のことばを聞いてそれを守る人たちです」と、主イエスの宣教に心を開く人々の幸いについて明らかになさっています。しかし29節に見るように、当時のある人々は主イエスのことばを受け入れようとせず、16節に、「また、イエスをためそうとして、彼に天からのしるしを求める者もいた」とあるように、確かな証拠を求めると言って、主イエスのことばを拒絶したのです。
この状態に対して、主イエスは29節と30節で、「この時代は悪い時代です。しるしを求めているが、ヨナのしるしのほかには、しるしは与えられません。というのは、ヨナがニネベの人々のために、しるしとなったように、人の子がこの時代のために、しるしとなるからです」と答えられています。
さらに旧約時代のヨナのニネベでの宣教と人々の応答を例(ヨナ書)とし、またソロモンの知恵を求めた、南の女王(Ⅰ列王記10章1~10節、Ⅱ歴代9章1~12節)の実例を通して、ご自身がいかなるお方であるかを示しご自身にどのような態度を取るべきかを教えておられます。
[2]主イエスはどのようなお方か
(1)「ソロモンよりもまさった者」(31節)
主イエスは、「その上に、主の霊がとどまる。それは知恵と悟りの霊、はかりごとと能力の霊、主を知る知識と主を恐れる霊である」(イザヤ11章2節)と預言されているお方です。また「このキリストのうちに、知恵と知識との宝がすべて隠されているのです」(コロサイ2章3節)と証言されているお方です。「ソロモンよりもまさった者」と言われるお方に対して、王の王・主の主と賛美を献げ得る恵みを感謝したいのです。
(2)「ヨナよりもまさった者」(32節)
神のことばを語った預言者たち。ヨナは特徴ある預言者として、異邦人の町ニネベの宣教に遣わされました。彼の宣教を通して、ニネベの人々は悔い改めたのです。
しかし世々の預言者たちと主イエスの関係について、ヘブル人への手紙1章1、2節で明らかにされている事実に注意したいのです。
「神は、むかし父祖たちに、預言者たちを通して、多くの部分に分け、また、いろいろな方法で語られましたが、この終わりの時には、御子によって、私たちに語られました。神は、御子を万物の相続者とし、また御子によって世界を造られました」
この終わりの時には、御子主イエスご自身を通して、父なる神は語られたのです。
[3]主イエスに対し、私たちの取るべき態度
では、このお方にどのような態度を私たちは取るべきなのでしょうか。
(1)第一は「求め」
「なぜなら、彼女はソロモンの知恵を聞くために地の果てから来たからです」(31節)。神に知恵を与えられたソロモンの知恵を聞くために、南の女王がそれほどの努力をして求めたとすれば、「ソロモンよりもまさった者」であるお方に対して、私たちの取るべき態度は明らかです。最初のクリスマスの羊飼たちの態度に学び(ルカ2章15節)、主イエスのもとに進み求めるのです。
(2)第二は「悔い改め」
ヨナの宣教を通して、ニネベの人々が悔い改めに導かれたとすれば、「ヨナよりもまさった者」であるお方に対してどのような態度を取るべきか明白です。
[4]結び
御子がどのようなお方かを思い巡らし、このお方から知恵と知識を求めつつ、あらゆる分野で営みを進めて行く。また私たちの歩みを父なる神の御心にかなうものとなすべく与えられている特権と責任を思いつつ、悔い改めをなし続けて行くことが出来ますように。
宮村武夫(みやむら・たけお)
1939年東京生まれ。日本クリスチャン・カレッジ、ゴードン神学院、ハーバード大学(新約聖書学)、上智大学神学部修了(組織神学)。現在、日本センド派遣会総主事。
主な著訳書に、編著『存在の喜び―もみの木の十年』真文舎、『申命記 新聖書講解シリーズ旧約4』、『コリント人への手紙 第一 新聖書注解 新約2』、『テサロニケ人への手紙 第一、二 新聖書注解 新約3』、『ガラテヤ人への手紙 新実用聖書注解』以上いのちのことば社、F・F・ブルース『ヘブル人への手紙』聖書図書刊行会、他。