前ローマ教皇の名誉教皇ベネディクト16世の葬儀が5日、バチカン(教皇庁)のサンピエトロ広場で行われた。約5万人の弔問客が参列し、12月31日に95歳で亡くなった名誉教皇に最後の別れを告げた。
車椅子に乗りながら葬儀の司式をした教皇フランシスコは、ルカによる福音書23章46節から、十字架にかけられたイエスが最後に語った言葉「父よ、わたしの霊を御手にゆだねます」を引用。名誉教皇の喜びが、天の御国で主とまみえることで完全なものとなるようにと祈った。
「御父の慈悲深い御手が、名誉教皇が生涯にわたって広め、証しした福音の油をもって、彼のともしびをともされますように。ここに集う神の忠実な民よ、今こそ、自分たちの牧者であった名誉教皇が生涯を懸けた神に従い、委ねようではありませんか」
「私たちは、名誉教皇が長年にわたって私たちに与えてくれたのと同じ知恵と優しさと献身をもって、それを行いたいと思います。『父よ、わたしの霊を御手にゆだねます』と、共に言いたいと思います。ベネディクト、花婿イエスの忠実な友よ。今もこれからも、花婿の声を聞いてあなたの喜びが満たされますように」
存命中の教皇が、前任の教皇の葬儀を執り行うのは、数世紀ぶり。
葬儀には、ベルギーのフィリップ国王とマティルド王妃、イタリアのジョルジャ・メローニ首相とセルジョ・マッタレッラ大統領、ドイツのフランクワルター・シュタインマイアー大統領とエルケ・ビューデンベンダー大統領夫人らが来賓として出席した。
名誉教皇ベネディクト16世は2005年、先々代の教皇ヨハネ・パウロ2世の後を継いで教皇に就任。13年に高齢を理由に退位するまで、カトリック教会のトップとしての責務を担った。退位後は、バチカンのマーテル・エクレジエ修道院で過ごした。
教皇フランシスコは名誉教皇の死の数日前、「重篤」な健康状態にあるとして、名誉教皇のための「特別な祈り」をささげるよう呼びかけていた。亡くなった当日に行った説教では、名誉教皇は「高貴」であるとともに、「優しさ」のあふれる信仰の人であったと賛辞を送っていた。