仕える(聖書的)リーダーシップを働かせること
キリスト者のビジネスマンが、クリスチャンリーダーとして立てられているという思いを持ち、労働の場で仕える(聖書的)リーダーシップを確立することは〔24〕、労働へ聖書的原則を適用させる点においてとても重要である。なぜなら、労働の場における人間関係は極めて重要であるし、真に神のために神の力によって生きるという多くのクリスチャンリーダーたちが、今日本の職場には必要だからである。
神もキリスト者のビジネスマン一人一人に、今与えられている状況の中で、仕える(聖書的)リーダーシップを働かせてほしいと強く願っておられることと思う。私自身も牧師の働きを通して、仕える(聖書的)リーダーシップを発揮し人々に仕えていくこと、また自分を差し出していくことが、キリスト者にとって大変重要な資質であることをあらためて学ばされている。
仕える(聖書的)リーダーシップの定義については、「神様から与えられる特別な資質(スキル)と責任とを持って、ある特定のグループの人々に影響力を与え、彼らをグループの特定の目的に向けて推し進めていくものである」と表すことができる〔24〕〔25〕。
この定義から、仕える(聖書的)リーダーシップには、リーダーの目的、リーダーが関わっていく人々、リーダーその人自身の影響力という3つの大きな要素が不可欠であることが分かる。それゆえ、仕える(聖書的)リーダーシップを発揮するためには、これらの3つの要素のおのおのを覚え、それらを形成することが求められる。
では、仕える(聖書的)リーダーシップは、一般の(この世の)リーダーシップとどう違うのであろうか。一般の(この世の)リーダーシップの特質が、リーダーは主人公、命令型、地位と権力による、力と強制による、恐れによって支配する、能力による、世の原理と方法に基づく、人間中心、などであるのに対し、仕える(聖書的)リーダーシップの特質は、リーダーはコーチ、サーバント型、影響力・権威による、動機づけによる、愛によって導く、スキルによる、聖書に基づく、神中心、などであり、両者の特質は大きく異なる。また仕える(聖書的)リーダーシップには、以下のような特徴もある〔24〕〔25〕。
- 神が中心にあり、神によって押し出されるものである。そして、キリストの生き方や聖書の御言葉に倣うものである。
- 何をなすか《doing》よりも、誰であるか《being》がより重要である。
- 生まれつきのものではなく、形成されるものである。
- 組織のトップ、先駆者、知識人、起業家、などにのみ見いだせるような、まれな能力や素質というようなものではなく、誰もが持つことのできるものである。
- 身分、地位、立場などではなく、また権力でもない。
- 神から来る特別な影響力・権威によるものである。(ここで、権力と権威の違いを理解することが大切である。権力は、他人を自分の地位あるいは力で強制し、たとえその人の意思に添わなくても、自分の意のままにさせる能力である。それは、売買したり与えたり奪ったりできるもので、長続きしないものである。一方権威は、自分個人の影響力があるため、自分の意図しているように他人を快く行動させられるスキルのことである。それは、売買したり、与えたり奪ったりできないもので、長続きするものである)
- グループの人数や目的の大小・規模にかかわらず、形成され得るものである。
- 目的による一致を促進し、グループにとって最も益となるように変化を引き起こし、導くプロセスである。
- リーダーとしての立場で働いていなくても、発揮することが可能なものである。
仕える(聖書的)リーダーシップを発揮した最高の模範は、キリストである。またその他の良き例としては、パウロ、ネヘミヤ、マザー・テレサ、キング牧師などを挙げることができよう。
以上、仕える(聖書的)リーダーシップについて簡単に述べたが、全てのキリスト者のビジネスマンは、この世のリーダーシップが主流の社会の中で、自分が労働の場に召されている意味をはっきりと認識し、クリスチャンリーダーとして仕える(聖書的)リーダーシップを発揮することが強く求められている。
ただ、神を知らない人が大多数の社会の中で、仕える(聖書的)リーダーシップを実践すること、また神が与える労働の本来の姿を少ないキリスト者のみで取り戻すことは、決してやさしいことではないであろう。むしろそれは茨(いばら)の道、苦難の道であると言ったほうがよいであろう。
それでもなお、社会の中で仕える(聖書的)リーダーシップを発揮していくことが、キリスト者には求められているのである。キリストが苦難の道を歩まれたように、いかに困難であってもそのことに真剣に取り組むことが必要である。神に不可能なことはないこと、神には無限の力があることを覚えたいと思う。
そして、神は必ず全てを相働きて益と変えてくださるお方、また試練と共に脱出の道を備えてくださるお方という信仰に立ち、神から託されたクリスチャンリーダーの役割を担っていくものでありたいと思う。
キリスト者は甘いと言われないためにも、神から召された者であることをはっきりと認識し、その召され、遣わされた場で、クリスチャンリーダーとして仕える(聖書的)リーダーシップを発揮しつつ、責任を全うし、成果を上げ、主を証しすることが必要である。
そうすることによって、召されたその場が、神の栄光を表す場に徐々に変えられていくことを信じる。その一つ一つの小さな積み重ねとして、社会が、日本が、変わっていくことを、神はどんなに喜ばれることであろうか。
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(参考並びに引用資料)
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