カトリックの国際的な福祉・援助機関である国際カリタスは22日、米国カトリック司教協議会の救援事業団体であるカトリック・リリーフ・サービスの人道対応部で、活動のための上級技術顧問を務めているジョン・サービス氏からの報告として、エクアドル大地震の被害は甚大だとして、次のように伝えた。
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(エクアドル北西沿岸にある)ペデルナレスの町では、エクアドルを荒らしたマグニチュード7・8の大地震による破壊を五感の全てで感じ取ることができる。私たちがペデルナレスに着いたとき、私は4万人が住むこの町を漂う腐敗臭に圧倒された。がれきを削り取っているクレーンがあまりにも多くの塵(ちり)を巻き起こしたので、私たちは他のほとんどの人たちと同じように手術用のマスクを着用した。
この街の一画は超現実的な風景だ。この一画の中心に立っていると、どの方向を見ても、隅っこに一つ残されて立っているだけで、あとは建物がない。この混沌はあまりにも激しく、破壊があまりにも巨大なため、私は、その中を生きることがいかに恐ろしかったに違いないかを想像するだけで精いっぱいである。
残念ながら、大部分の捜索・救出活動は中止されてしまった。隊員たちは命の兆候を求めて匂いを嗅ぐ犬たちを連れて歩いている。誰も見つからないとき、彼らはクレーンを寄せては倒壊した建物を取り除いている。一度に3人か4人が働いており、がれきを取り除くために送り込まれたダンプカーを絶えず整理している。
大半の人たちは自宅から避難し、彼らの町や都市へとつながる道路沿いで安全を求めた。そうする人たちが多かったのは、彼らの自宅には何も残されていないからであるが、その一方で他の人たちは、自宅に残されているものは、いまだ感じられる数えきれないほどの余震で倒壊するだろうと恐れている。町の郊外には建物がないため、安全だという感じがする。
自然発生的な連帯の第一波として、善意で関心のある市民団体や企業による臨時の救援活動が始まった。トラックが都心部から到着しては、食べ物やその他の寄付品を持ち込んでいる。それはとりあえずの解決策で必要なものではあるが、しかし見過ごされてしまっている人たちはいるのだ。
向こう数週間でカリタス・エクアドルとカトリック・リリーフ・サービスは、防水シートや衛生用品ないし調理器具など一式の配布を開始する。最も脆弱(ぜいじゃく)な住民に確実に届くようにするため、人々を登録し、誰が援助を受けていて誰がまだ受けていないかを判断する。
エクアドルの国民にとっては幸運なことに、二つの別々な港に、便益でよく機能している産業基盤がある。道路は破損しているものの、それらは破壊されてはいない。海岸沿いに車を走らせると、道路に裂け目があるのを見た。この道路はねじれてゆがんでいるが、幸運なことにこの道路は通行可能である。
強力な市場構造もそこにはあり、これは地元での品物の供給に頼れる可能性が存在することを意味している。これによって団体が地元レベルで購買することができ、商売の増大を助け、長い間地域で主要な役割を担ってきた家族経営の地元商店を支えるのである。
今後は長期的な避難所のニーズを考え始める必要が出てくるだろう。しかし、すでに貧困で不確かな状態の中で生活することを強いられているので、難しいことではある。
私たちは、震源地となったムイスネからわずか2、3キロの島にある、ある地域社会を訪ねた。地震が襲ってきたときは、干潮だった。建物が倒壊したとき、彼らは足下の砂にひれ伏した。もし潮が幾らかでも高かったら、幼い子どもたちは水の中に落ちて流されてしまっていたかもしれない。この島に上陸するか離れる唯一の手段は、いかだ船かフェリーである。もし津波が襲ってきたとしたら、それは死のわなになるだろう。同じ島に建て直せというのは無責任になる。もし似たような出来事が起きたら、彼らはみな危険にさらされるだろう。これらの類いの要素を考慮する必要がある。
私たちは仮設住宅を建てられる場所の候補地を検討中である。2万3500人を超える人々が住処(すみか)のないままにされているが、自宅が破損した人たちが他にもなお多くおり、彼らが戻るのは安全でないかもしれない。それが大きな問題なのだ。これらの人々は、いったいどこに住めばいいのだろうか?
エクアドルのラファエル・コレア大統領は、この地震による被害総額は300億ドル(約3兆7500億円)と推計している。そのレベルの破壊では、都市が再建されて人々が自宅に帰るまでには長い時間がかかるだろう。援助機関は、キャンプを設営することや、水や衛生、そして子どもが親しみやすい場所といった、基本的なものを提供するにはどうしたらよいかを考える必要がある。いったんそれが達成されれば、任務は仮設住宅の提供へ、そして最終的にはどうやって人々に家に帰ってもらうかへと移っていくだろう。
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カトリック教会、エクアドルの大地震に対応
国際カリタスは20日、公式サイトのニュースで、エクアドルの大地震に対するカトリック教会の対応を次のように伝えた。
マグニチュード7・8の地震がエクアドルの沿岸にあるエスメラルダス地方を揺るがした直後、500人を超える人々が、安全を求めてクリスト・レイ(王であるキリスト)・カトリック大聖堂に到着した。
津波への恐怖で人々はおじけづいていた。中庭は家族や高齢者、そして幼い子どもたちでいっぱいだったが、中には地震が16日(土)の午後6時58分に襲ってきたときに、水浴び中だったりベッドの用意中で、ろくに身づくりもしていない人たちもいた。
エウゲニオ・アレラノ司教がその後すぐに到着した。「地震が襲ってきたとき、彼は自分の車の中にいて、タイヤがパンクしたのかと彼は思った」と、地元のカトリック・ラジオ局「アンテナ・リブレ」のジャーナリスト、セグンド・ザムブラノ氏は語った。
この地震で遠距離通信は全て断ち切られ、電話をしてもうんともすんとも言わない。電気も停電し、とりわけ子どもたちは非常にのどが渇いていて、水を必要としている。
「司教がとても心配していたのは、助けが目に見えなかったからだ」とザムブラノ氏は述べた。「彼は通りの真ん中を出て行き、懐中電灯を手に巡査を呼び止め、クリスト・レイにいる人たちを助けてもらった」
幅広い被害により、人々は揺さぶられたままだ。20日の時点で死亡者数は400人を超えており(25日には650人を超えたと報じられている)、増加し続けるものと思われる。2千人を超える人々が負傷し、数えきれない人々が自宅を失ったり、屋内で眠るのを怖がっている。同司教は教区民と共に留まり、津波警報が解除されて人々が自宅に戻り始めるまで水を配っていた。
カリタス・エクアドルとカトリック教会は寄付金が急増したのをすぐに確認し、物品を降ろす地点としての役目を担った。医薬品のような特別品は政府を通じて運ばれているが、その一方で15台の満載のトラックが(エクアドル北西部の)エスメラルダス県にあるカトリック教会によって送り出され、家族向けに緊急救援物資を提供した。
そのような寄付品が生命線となってきた。エスメラルダス県は、破損やがれきで道路が封鎖されたために、当初、到達が困難であった。代替路が確立されて、とても必要とされていた救援を取り込む助けとなったと、ザムブラノ氏は伝えている。
助任司祭のシルビノ・ミナ神父によると、最も需要が高い品物は、人々が食事の支度をするために再利用が可能な台所用品である。幼児の母親たちは赤ちゃんのおむつも求めている。
地震が襲ってきた翌日、同司教は被災した地域を見て回った。330を超える家屋が破壊され、他にも数えきれない家屋がひび割れしたり屋根がなかったりしたのを見た。家屋の建て直しや修復は最優先課題だろう。
「私たちは兄弟たちの連帯を呼び掛けます」とシルビノ神父は言う。「司教様は建物の資材を供給するために幾らか経済的な支援を得る働きをしてきておられます。多くの家屋に屋根が必要なのです」
「カトリック教会は直ちに私たちの民と共におりました」とシルビノ神父は言う。「私たちは希望のメッセージを伝えなければなりません。希望を失ってはなりませんし、エスメラルダス県の人々のために働き続けなくてはならないのです。世界中の人たちの寛大な手を通じて、神様が備えてくださるという信仰を持たなくてはなりません。神様が彼らを全て祝福してくださいますように」
(エクアドル西部の)マナビ県の県都ポルトビエホは、とりわけ被害が深刻であった。カトリック教会は600人に避難所を提供したが、多くの教会堂は破壊されてしまった。
ポルトビエホにあるサン・フアン教区のリカルド・ガルシア神父はこう述べた。「私たちが最も必要としているのは、飲料水と防水テント、カバー付きマットレス、台所用品、そして地域社会のために料理を作るためのガスボンベ、そして食べ物です」
「私の教区では、100人を超える人たちに食べ物を配っていますが、隣の教区であるベンノでは、400人が食べ物を受け取りました。私たちにはガスコンロとガスボンベが必要なのです」と同神父は語った。
「私は昨日のミサで司式を行い、亡くなった夫婦を葬りましたが、今日はこの地震で亡くなった女性のためにもう一つのミサを行います。それはとても悲しいですが、少なくとも彼女たちのご遺族にはご遺体がありますから。今もなおがれきの中で愛する人たちを捜している人たちがいるのです」
※なお、この記事にある写真と原文の使用に当たっては、国際カリタスの許諾を得ました。(Ecuador earthquake: photo diary)